第50話 総員退却 西暦2025年July
文字数 4,198文字
ニューヨーク マンハッタン 5番街
New York Manhattan Fifth Avenue
セントラルスターホテル
Central Star Hotel
「隊長。扉の爆破準備が整いました」
爆発物担当員が、隊長ジャガーに準備完了を上申 する。
カ-レル財団筆頭執事ジェームス・モートンの救出作戦が、開始されようとしていた。
「ジャガーだ。B班後方支援部隊。現在の状況はどうか? エレベータからの進入路は確保されたのか? どうぞ」
「こちらB班後方支援部隊。予定通りです。地下二階でエレベータを確保しています」
「よし。我等はこれより扉を爆破する。B班後方支援部隊は作戦行動を開始。エレベーターでペントハウスに向かえ。到着後、ペントハウスに居る民間人の避難誘導を完了させよ」
「B班後方支援部隊。了解しました」
「A班後方支援部隊は、我等突入部隊の後ろから侵入、侵入と同時に、ペントハウス内にいる民間人の避難 誘導に当れ。民間人避難後は突入口を完全に閉鎖、階下より誰も寄せつけるな」
「A班後方支援部隊。了解しました」
「突入実行部隊は作戦終了後、ジェームス様を連れて屋上から完全撤退 する。撤退時は財団本部にて用意された輸送ヘリを使用。負傷者は屋上にて待機 。救援 のヘリを待て」
「ラジャー!」
「時間を確認しろ。扉を爆破!」
一瞬の閃光 と共に、扉に仕掛けられた四隅 の火薬が爆発する。
「押せ。打ち倒せ!」
ジャガーの命令に、ペントハウスへと続く大扉が押し倒される。
「突入!!」
良く響くジャガーの命令の下、自動小銃を構えた突入隊員が続々とペントハウスの内部へと飲み込まれて行く。
「民間人は退避 せよ!」
突入隊員の後方から侵入するA班後方支援部隊員が、天井に向け銃を乱射し大声を上げる。
ペントハウスの内部では、突如としてなだれ込んだ重装備戦闘員の乱入によりパニックが起こっていた。
女性が悲鳴 を上げる中、腰が抜けて座り込む人間の姿も多く見られた。そのような民間人を、A班B班後方支援部隊の隊員が二人一組にて抱 き抱 え、安全な場所にまで避難をさせて行く。
「始まったな…」
戦闘機ハリアーGR・7の後部座席でカ-レルが呟く。
突入隊員はそれぞれのグループに別れ、財団独自の戦闘体型を組みジェームスの倒れている地点へと向かって行く。
ジャガーは隊員に命じて、発煙弾 を使用している。煙幕 を展開して敵の視界を遮断 する作戦が遂行 されていた。
「作戦は予定通り遂行しています」
隊長ジャガーが通信機に言葉を入れる。
「隊長。煙の中に獣 の姿が見えます。こちらに向かい咆哮 をあげています。ナイフや大鎌 、獣たちはそれぞれに武器を携帯しています」
特殊ゴーグルを装着した隊員が声を掛ける。
「ああ。あの五体は悪魔と聞いている。目標を選定。良く狙い、決して外すな。ファイヤー !」
ジャガーの命令で隊員が一斉 に銃撃を始める。
突入組の隊員はありったけの弾丸を悪魔の群れに打ち込んだ。
「よし。打ち方止め!」
充分に成果があったと確信したジャガーは隊員に銃撃を止めさせる。
隊員が熱を帯びた小銃を気遣う。煙幕弾の煙りが深く漂 う室内に、静かな時間が流れて行った。
「隊長。おかしいです。打ち込んだ総ての弾丸 が空中に浮いています」
弾丸の金属粒が総て、目標の手前で空中に停止している様子を特殊ゴーグルにて確認した隊員が、驚きの発声 を上げた。
「更に近くに寄り、小銃を打ち続けろ!」
隊長ジャガーの命令が飛ぶ。
「待て。動いてはならん!」
突然、隊員総てのヘルメットに大きな声が鳴り響く。財団総統カーレル・B・サンダーの発する音声である。
「全員、即座 に後退 。退却 せよ。後は儂 らに任せ、総員退却だ!」
カ-レルは戦闘機ハリアーGR・7のコックピット後部座席から大声を上げる。
その時、屋内に加速度を付け割れゆくガラスの音が鳴り響いた。
「何の音か?」
隊員の一人が取り乱す。
「窓ガラスが割れている。ハウスの窓ガラスが総て割れているんだ!」
隊員達は煙幕弾の煙り漂う中、音だけの見えない恐怖に翻弄 される。
「冷静になれ。冷静を保て!」
部隊長ジャガーが隊員達の動揺 を必死に押さえる。
「そうだ。今こそ冷静に行動するのだ。安全な所まで急いで退避 せよ。ジャガー。早く総員を退避させよ!」
音速で飛行中の戦闘機から、カ-レルはジャガーに指示を飛ばす。
「そこには魔王がいる!!」
カ-レルは自分がそこに着くまでのあとほんの僅 かな時間が、なんとも恨 めしく感じていた。
「魔王セラヌ。奴 がいるのですね!?」
操縦桿を握るレオナルドが声を上げる。
「ああ。奴以外に数万発もの自動小銃の弾丸を止められる者はおらぬよ…」
カーレルはレオナルドに答えた後、無線機に向かい絶叫 する。
「隊長。早く逃げるのだ!」
セントラルスターホテル最上階にある魔王セラヌのペントハウス。美しい居住空間が、突然の訪問者により酷 く汚されてしまった。
居住空間の窓ガラスが割れ、煙幕弾の煙りが入り込む外気に流されると、ハウスの支配者と彼を取巻く四体の悪魔の姿が露 にされて行く。
「ひーいっ。何だあの姿は?」
「あれは人間じゃない。獣 だ!」
「銃弾が、銃弾が全て空中に浮いている。何千発も何万発も全てが!」
流石の特殊部隊の猛者 達も、生まれてはじめて出会う浮き世離れした光景を目の当たりにして、冷静を保つ事はおろか恐怖を隠す事さえ忘れてしまっていた。
「おい逃げよう。総統の言う通りだ。早く逃げよう!」
ペントハウスに敷かれた深紅 の絨毯 の上には、うつ伏して、ぴくりとも動かぬカ-レル家筆頭執事ジェームス・モートンの姿があった。
倒れ込んだジェームスの前には、人間の倍程もある大きな肉体を持つ悪魔達が立ち塞がっていた。各々に違う形体を持つ四体の魔獣。彼等の足下には、びりびりに千切れた黒いタキシードの残骸 が散らばっていた。
魔獣が守り取り巻く中央に、一人の男が存在する。美しい容姿 の男が静かに、豪華な椅子に腰掛けている。彼丈 が正装した人間の姿で、しかも口元の微笑は絶やさずに、涼しい視線で隊員達を見詰めていた。
「せっかく来たのに急いで帰る事はない。もう少し楽しんで行くが好い」
男が静寂 の空間で言葉を発する。
「それに、もう逃げられない」
無粋 な侵入者に向けて、男が更に言葉を放った。
男の魔声を受け、隊員総ての脚が硬く強張 る。
「そう。君達はもう一歩も動けない」
男は更に言葉を繋 ぐ。
「ふっふっ」
静かに笑いながら、魔王セラヌが立ち上がる。
「銃弾など」
魔王の言葉を前に、空間に浮かんでいた総ての銃弾がパラパラと落下し、深紅の絨毯へと飲み込まれて行った。
「君が隊長か? カ-レルの愛犬。ふっ。もう一度銃弾を打ち込んでみるがいい」
その場で立ち尽くすジャガーに向かい、セラヌは自分の額を指さし告げる。
「セラヌ様。既に彼等は微動だにしません」
セラヌの右手に位置する魔獣バートンが、突入して来た隊員達の代わりに答えた。
(動けない。何故だ? この男の目を見て声を聞いたからなのか?)
ジャガーだけでは無い、突入して来た総ての隊員がその場でピクリとも動けずにいた。
「この程度の奴らが… ふっ。私とした事がとんだ油断 をしたものだ。バッジョが創りしカ-レル財団。今日迄、奴らの企てを何も掴 めなかったとは、我らも情けない限りだ…」
不機嫌なセラヌの様子を察知 した四体の魔獣は、皆無言を貫 いている。
「ペントハウスは、こいつらごと総て焼き尽くせ。このホテルとて、もう要らぬ…」
四体の魔獣は魔王の命令の前に頭をたれた姿勢でうなずいていた。
しかしその刹那。
「目を醒 ませ。ジャガー!!」
隊員のヘルメットに装着された無線機から、カーレル・B・サンダーの大声が響き渡る。
「目標を確認。レオナルド。屋敷の屋根を吹き飛ばせ!!」
レオナルドは魔王セラヌの所有するペントハウスの屋根に向かって、ハリアーGR・7固定武装 25mmアデン機関砲を打ち放った。「バリバリバリバリ」 雷鳴のような音と共に、ホテル最上階に建てられたペントハウスの屋根が吹き飛んで行く。
屋根に空いた穴の上空を、大きな音を鳴らして、レオナルドとカ-レルの乗る戦闘機ハリアーGR・7が超低空で飛び去って行った。
「ジャガー。目が覚めたら総員退却だ!!」
機関砲の爆音に刺激され我に帰った隊員達の耳に、カーレルの大きな声が響き渡る。
「退却。退却!」
いちはやく我に帰ったジャガーが、総ての隊員を引き連れ猛烈 な勢いで待避 を始めた。
「何だと?」
空から機関砲を打ち放たれる事など、まるで予想もしていなかった事態である。魔王セラヌと四体の魔獣は、隊員達の逃避 を止める事も出来ずに、ただ天井にぽっかりと開いた穴から天空を眺めていた。
戦闘機ハリアーGR・7はホテルの上空を通過した後、右に大きく旋回 、そのままセントラルスターホテルの上空で停止すると、ペントハウス内への垂直着陸体勢に入った。
「着陸し ます!」
レオナルドが戦闘機ハリアーGR・7の計器を操作する。
「漸 く着いたのう。随分 と長い道程 に感じた」
カ-レルは操縦桿を握るレオナルドに声を掛ける。
「ええ。同感です。漸 くここに辿 り着いた」
レオナルドは魔王との戦いを前にして、ぐらぐらと煮え滾 る血の騒ぎを感じていた。
「嘗 てのバッジョは、熱い血の滾りを冷静に処理していた。煮え滾る血の騒ぎを、振るう剣の鋭い軌道に変える程迄に、バッジョは成長をして居たぞ」
カーレルは、レオナルドの心中を察知して助言をする。
「はい。解っています!」
「冷静に冷静にだ。レオナルドよ、醒 めた思考で戦おうではないか…」
「大丈夫です」
レオナルドは自分の心に言い聞かせるように答えた。
セントラルスターホテルの最上階で豪華に咲き誇こっていた魔王セラヌ自慢のペントハウスが、見るも無惨に壊されていた。機関砲で吹き飛ばした屋根からペントハウスの床に向けて、戦闘機ハリアーGR・7が垂直着陸を始める。推力偏向 ノズルから噴射されるジェットエンジンの排気が、あらゆる家具や装飾 品を吹き飛ばして行った。
ペントハウスに居た民間人は、A班B班後方支援部隊の活躍により、既に総て避難を終えている。レオナルドが装着する戦闘用ゴーグルには、魔王セラヌをガードする四体の魔獣の位置が映し出されていた。
New York Manhattan Fifth Avenue
セントラルスターホテル
Central Star Hotel
「隊長。扉の爆破準備が整いました」
爆発物担当員が、隊長ジャガーに準備完了を
カ-レル財団筆頭執事ジェームス・モートンの救出作戦が、開始されようとしていた。
「ジャガーだ。B班後方支援部隊。現在の状況はどうか? エレベータからの進入路は確保されたのか? どうぞ」
「こちらB班後方支援部隊。予定通りです。地下二階でエレベータを確保しています」
「よし。我等はこれより扉を爆破する。B班後方支援部隊は作戦行動を開始。エレベーターでペントハウスに向かえ。到着後、ペントハウスに居る民間人の避難誘導を完了させよ」
「B班後方支援部隊。了解しました」
「A班後方支援部隊は、我等突入部隊の後ろから侵入、侵入と同時に、ペントハウス内にいる民間人の
「A班後方支援部隊。了解しました」
「突入実行部隊は作戦終了後、ジェームス様を連れて屋上から完全
「ラジャー!」
「時間を確認しろ。扉を爆破!」
一瞬の
「押せ。打ち倒せ!」
ジャガーの命令に、ペントハウスへと続く大扉が押し倒される。
「突入!!」
良く響くジャガーの命令の下、自動小銃を構えた突入隊員が続々とペントハウスの内部へと飲み込まれて行く。
「民間人は
突入隊員の後方から侵入するA班後方支援部隊員が、天井に向け銃を乱射し大声を上げる。
ペントハウスの内部では、突如としてなだれ込んだ重装備戦闘員の乱入によりパニックが起こっていた。
女性が
「始まったな…」
戦闘機ハリアーGR・7の後部座席でカ-レルが呟く。
突入隊員はそれぞれのグループに別れ、財団独自の戦闘体型を組みジェームスの倒れている地点へと向かって行く。
ジャガーは隊員に命じて、
「作戦は予定通り遂行しています」
隊長ジャガーが通信機に言葉を入れる。
「隊長。煙の中に
特殊ゴーグルを装着した隊員が声を掛ける。
「ああ。あの五体は悪魔と聞いている。目標を選定。良く狙い、決して外すな。
ジャガーの命令で隊員が
突入組の隊員はありったけの弾丸を悪魔の群れに打ち込んだ。
「よし。打ち方止め!」
充分に成果があったと確信したジャガーは隊員に銃撃を止めさせる。
隊員が熱を帯びた小銃を気遣う。煙幕弾の煙りが深く
「隊長。おかしいです。打ち込んだ総ての
弾丸の金属粒が総て、目標の手前で空中に停止している様子を特殊ゴーグルにて確認した隊員が、驚きの
「更に近くに寄り、小銃を打ち続けろ!」
隊長ジャガーの命令が飛ぶ。
「待て。動いてはならん!」
突然、隊員総てのヘルメットに大きな声が鳴り響く。財団総統カーレル・B・サンダーの発する音声である。
「全員、
カ-レルは戦闘機ハリアーGR・7のコックピット後部座席から大声を上げる。
その時、屋内に加速度を付け割れゆくガラスの音が鳴り響いた。
「何の音か?」
隊員の一人が取り乱す。
「窓ガラスが割れている。ハウスの窓ガラスが総て割れているんだ!」
隊員達は煙幕弾の煙り漂う中、音だけの見えない恐怖に
「冷静になれ。冷静を保て!」
部隊長ジャガーが隊員達の
「そうだ。今こそ冷静に行動するのだ。安全な所まで急いで
音速で飛行中の戦闘機から、カ-レルはジャガーに指示を飛ばす。
「そこには魔王がいる!!」
カ-レルは自分がそこに着くまでのあとほんの
「魔王セラヌ。
操縦桿を握るレオナルドが声を上げる。
「ああ。奴以外に数万発もの自動小銃の弾丸を止められる者はおらぬよ…」
カーレルはレオナルドに答えた後、無線機に向かい
「隊長。早く逃げるのだ!」
セントラルスターホテル最上階にある魔王セラヌのペントハウス。美しい居住空間が、突然の訪問者により
居住空間の窓ガラスが割れ、煙幕弾の煙りが入り込む外気に流されると、ハウスの支配者と彼を取巻く四体の悪魔の姿が
「ひーいっ。何だあの姿は?」
「あれは人間じゃない。
「銃弾が、銃弾が全て空中に浮いている。何千発も何万発も全てが!」
流石の特殊部隊の
「おい逃げよう。総統の言う通りだ。早く逃げよう!」
ペントハウスに敷かれた
倒れ込んだジェームスの前には、人間の倍程もある大きな肉体を持つ悪魔達が立ち塞がっていた。各々に違う形体を持つ四体の魔獣。彼等の足下には、びりびりに千切れた黒いタキシードの
魔獣が守り取り巻く中央に、一人の男が存在する。美しい
「せっかく来たのに急いで帰る事はない。もう少し楽しんで行くが好い」
男が
「それに、もう逃げられない」
男の魔声を受け、隊員総ての脚が硬く
「そう。君達はもう一歩も動けない」
男は更に言葉を
「ふっふっ」
静かに笑いながら、魔王セラヌが立ち上がる。
「銃弾など」
魔王の言葉を前に、空間に浮かんでいた総ての銃弾がパラパラと落下し、深紅の絨毯へと飲み込まれて行った。
「君が隊長か? カ-レルの愛犬。ふっ。もう一度銃弾を打ち込んでみるがいい」
その場で立ち尽くすジャガーに向かい、セラヌは自分の額を指さし告げる。
「セラヌ様。既に彼等は微動だにしません」
セラヌの右手に位置する魔獣バートンが、突入して来た隊員達の代わりに答えた。
(動けない。何故だ? この男の目を見て声を聞いたからなのか?)
ジャガーだけでは無い、突入して来た総ての隊員がその場でピクリとも動けずにいた。
「この程度の奴らが… ふっ。私とした事がとんだ
不機嫌なセラヌの様子を
「ペントハウスは、こいつらごと総て焼き尽くせ。このホテルとて、もう要らぬ…」
四体の魔獣は魔王の命令の前に頭をたれた姿勢でうなずいていた。
しかしその刹那。
「目を
隊員のヘルメットに装着された無線機から、カーレル・B・サンダーの大声が響き渡る。
「目標を確認。レオナルド。屋敷の屋根を吹き飛ばせ!!」
レオナルドは魔王セラヌの所有するペントハウスの屋根に向かって、ハリアーGR・7
屋根に空いた穴の上空を、大きな音を鳴らして、レオナルドとカ-レルの乗る戦闘機ハリアーGR・7が超低空で飛び去って行った。
「ジャガー。目が覚めたら総員退却だ!!」
機関砲の爆音に刺激され我に帰った隊員達の耳に、カーレルの大きな声が響き渡る。
「退却。退却!」
いちはやく我に帰ったジャガーが、総ての隊員を引き連れ
「何だと?」
空から機関砲を打ち放たれる事など、まるで予想もしていなかった事態である。魔王セラヌと四体の魔獣は、隊員達の
戦闘機ハリアーGR・7はホテルの上空を通過した後、右に大きく
「
レオナルドが戦闘機ハリアーGR・7の計器を操作する。
「
カ-レルは操縦桿を握るレオナルドに声を掛ける。
「ええ。同感です。
レオナルドは魔王との戦いを前にして、ぐらぐらと煮え
「
カーレルは、レオナルドの心中を察知して助言をする。
「はい。解っています!」
「冷静に冷静にだ。レオナルドよ、
「大丈夫です」
レオナルドは自分の心に言い聞かせるように答えた。
セントラルスターホテルの最上階で豪華に咲き誇こっていた魔王セラヌ自慢のペントハウスが、見るも無惨に壊されていた。機関砲で吹き飛ばした屋根からペントハウスの床に向けて、戦闘機ハリアーGR・7が垂直着陸を始める。
ペントハウスに居た民間人は、A班B班後方支援部隊の活躍により、既に総て避難を終えている。レオナルドが装着する戦闘用ゴーグルには、魔王セラヌをガードする四体の魔獣の位置が映し出されていた。