第47話 空を翔る翼 西暦2025年July
文字数 2,372文字
戦闘機ハリアーGR・7コックピット
「ほう。上手なものだのう!」
「僕だって不思議ですよ。自動車の免許さえ所持 しない僕が、どうして戦闘機なんかを操 れるのか。だけど解るんです。完璧に操縦 が出来る。この機体が自分の手足のようにさえ感じるんです」
レオナルドは興奮する自分を感じていた。
「これも特殊睡眠時学習の成果だ。夜中に、貴殿の脳に直 に学習をさせておいたのだ。財団の科学技術には流石の初代も舌を巻くだろう?」
「はい。それは素直に認めます」
「本来、このハリアーGR・7は単座 なのだ。それを無理に頼み込んで複座 にしてもらった。レオナルド。この先の操縦は頼む。儂はこれより現地指揮官 と連絡をとる」
カ-レルは、ハリアーGR・7コックピットの後部座席から地上との交信を始めた。
「こちらカ-レル。カーレル・B・サンダーだ。チーム・サンダ-応答せよ!」
「はい。こちら特殊部隊チーム・サンダ-、部隊長ジャガーです」
「ジャガー。状況を説明せよ!」
「はっ。当家筆頭執事ジェームス・モートン様は、身柄 の位置を移動しております」
「ホテルの地下から出されたのか?」
「はい。周囲を数人の者にしっかりと固められ、ホテルの地下室からエレベーターに乗り込み移動しました。ジェームス様は現在、ホテルの最上階に拘束 されています」
「最上階。ホテルの最上階には何が在る?」
「大きな屋敷が建てられています」
「屋敷だと」
カ-レルが、ジャガーに聞き返す。
「ペントハウスとでも言うのでしょうか!? 屋敷の持ち主はセントラルスターホテルのオーナーでもあるようです」
「洗い出したのか?」
「更に詳しく調査中ですが、ホテルのオーナーについての情報は、厳重 な情報規制 が掛けられており、入手 が困難な状況です」
「ふーん、よし。それらの情報は、今後財団本部にて調査をさせる。隊長。君は自 らの任務遂行 に全力を注いでくれ!」
「解りました」
カ-レル財団私設特殊部隊長ジャガー・エドガーは、無線機の前で最敬礼 をし総帥 の指示に応えた。
「ジェームスは生きているな!?」
「はい。生命監視装置の計器類は総て、ジェームス様の健常 な心拍 を捕えています」
「そうか。ジャガー、他には何が解る?」
「はい。屋敷の中で、ジェームス様は何者かと会話をしている御様子。唯 、残念な事に建物内壁には高度な防音処置が施 されており、会話の内容を掴 む事は出来ません。ジェームス様の前方には健常な人間が一人。その者の体温と心拍も計器はしっかりと捕えています。ジェームス様は、その者との会話を続けています。更には二人を囲むように四人の人間が立っている様子が伺えます。屋敷内では多数の人間が調理等の仕事をしている模様 。ジェームス様をホテル最上階まで連行した者達は現在地下アジトも離れ、それぞれに分散、ホテルからは既に離れ外に出ています。勿論、その者達の尾行 も開始しています。唯…」
「唯。どうした?」
カーレルが尋ねる。
「ジェームス様を囲むように立ち並ぶ四人の様子が、どうも正常な人間とは異なるようなのです」
「ほう。どう異なるのか?」
「はい。体温が急激に上昇したり、そうかと思うと今度は驚く程低い体温の状態で肉体を維持したりなど… 四人は、意識的に体温の調節をしているようなのです」
「ほっほう!!」
カーレルはジャガーの報告に感嘆 の声を上げる。
「それに心拍も普通ではありません。四人とも人間の心臓の拍動とは明らかに心拍が異なるのですが、それ以上に不思議なのは、その四人さえもそれぞれに速さの異なる心拍のリズムを持ち、誰一人として同じ系統 のリズムを持つ者が居ないと言う事なのです。それはまるで…」
「まるで… 何だ?」
「まるで違う種類の生物を一同に集めたような印象を感じるのです」
「ほうーっ!」
カ-レルは再び感嘆の声を上げた。
「レオナルドも聞こえているな!?」
「ええ。聞こえていますとも」
「ジャガー。心してかかるのだぞ。その者達が悪魔じゃよ!」
カ-レルは言い放つ。
「戦略指令室長官。沙織・ガブリエルも聞こえたな!?」
「聞こえております。ホテルから四散した者達の尾行 については今、人工衛星システム連動昆虫型ロボットに任務を代行させるように指示を出しました。高層を飛行する無人偵察機が上空4,000メートルからサポートをします。悪魔が相手では、人間の尾行ではリスクが大き過ぎます」
ペンシルベニア州フィラデルフィア、財団本部戦略司令室に居る沙織・ガブリエルが応えた。
「よし。この戦いが終わるまで、儂とレオナルドのゴーグル、隊長との通信は繋いだままの状態に保ち続けるのだ。沙織、サポートを頼む。よいな!?」
「はい」
仲間の心が一つになる。
「隊長。ペントハウスで働く人々についてはどのような情報が集められている?」
「彼等は民間人のようです」
ジャガーが答える。
「そうか。救出作戦突入の際、後方支援部隊には、現場に居合わせる民間人の避難と保護を徹底させよ。五人の悪魔に対しての攻撃には情け容赦 は無用。しかし民間人を負傷させてはならない。良いな!?」
「了解しました」
「ジャガー、我等はあと5分程でそちらに到着する。ジェームスの身に生命の危機が迫らぬようなら、我等が着くまで突入は待て!」
「了解。作戦実行部隊は、作戦遂行 地点より二階下の研修室にて待機中。隊員の武装は完了しています。これより階段を上り、ペントハウスへと通じる扉の爆破準備に取り掛かります」
「OKだ!!」
自分が育て上げた精鋭 とのチームワークの良さが、カ-レルの気分を軽くしてくれる。
「ペントハウスに、魔王セラヌは居るでしょうか?」
戦闘機ハリアーGR・7の操縦桿 を握り締めながら、レオナルドが尋ねる。
「うーん。カレンの居らぬ戦場じゃ。役者が揃 わねば奴 は出て来ぬかもしれん」
カーレルにもそれは分からないのだ。
「ほう。上手なものだのう!」
「僕だって不思議ですよ。自動車の免許さえ
レオナルドは興奮する自分を感じていた。
「これも特殊睡眠時学習の成果だ。夜中に、貴殿の脳に
「はい。それは素直に認めます」
「本来、このハリアーGR・7は
カ-レルは、ハリアーGR・7コックピットの後部座席から地上との交信を始めた。
「こちらカ-レル。カーレル・B・サンダーだ。チーム・サンダ-応答せよ!」
「はい。こちら特殊部隊チーム・サンダ-、部隊長ジャガーです」
「ジャガー。状況を説明せよ!」
「はっ。当家筆頭執事ジェームス・モートン様は、
「ホテルの地下から出されたのか?」
「はい。周囲を数人の者にしっかりと固められ、ホテルの地下室からエレベーターに乗り込み移動しました。ジェームス様は現在、ホテルの最上階に
「最上階。ホテルの最上階には何が在る?」
「大きな屋敷が建てられています」
「屋敷だと」
カ-レルが、ジャガーに聞き返す。
「ペントハウスとでも言うのでしょうか!? 屋敷の持ち主はセントラルスターホテルのオーナーでもあるようです」
「洗い出したのか?」
「更に詳しく調査中ですが、ホテルのオーナーについての情報は、
「ふーん、よし。それらの情報は、今後財団本部にて調査をさせる。隊長。君は
「解りました」
カ-レル財団私設特殊部隊長ジャガー・エドガーは、無線機の前で
「ジェームスは生きているな!?」
「はい。生命監視装置の計器類は総て、ジェームス様の
「そうか。ジャガー、他には何が解る?」
「はい。屋敷の中で、ジェームス様は何者かと会話をしている御様子。
「唯。どうした?」
カーレルが尋ねる。
「ジェームス様を囲むように立ち並ぶ四人の様子が、どうも正常な人間とは異なるようなのです」
「ほう。どう異なるのか?」
「はい。体温が急激に上昇したり、そうかと思うと今度は驚く程低い体温の状態で肉体を維持したりなど… 四人は、意識的に体温の調節をしているようなのです」
「ほっほう!!」
カーレルはジャガーの報告に
「それに心拍も普通ではありません。四人とも人間の心臓の拍動とは明らかに心拍が異なるのですが、それ以上に不思議なのは、その四人さえもそれぞれに速さの異なる心拍のリズムを持ち、誰一人として同じ
「まるで… 何だ?」
「まるで違う種類の生物を一同に集めたような印象を感じるのです」
「ほうーっ!」
カ-レルは再び感嘆の声を上げた。
「レオナルドも聞こえているな!?」
「ええ。聞こえていますとも」
「ジャガー。心してかかるのだぞ。その者達が悪魔じゃよ!」
カ-レルは言い放つ。
「戦略指令室長官。沙織・ガブリエルも聞こえたな!?」
「聞こえております。ホテルから四散した者達の
ペンシルベニア州フィラデルフィア、財団本部戦略司令室に居る沙織・ガブリエルが応えた。
「よし。この戦いが終わるまで、儂とレオナルドのゴーグル、隊長との通信は繋いだままの状態に保ち続けるのだ。沙織、サポートを頼む。よいな!?」
「はい」
仲間の心が一つになる。
「隊長。ペントハウスで働く人々についてはどのような情報が集められている?」
「彼等は民間人のようです」
ジャガーが答える。
「そうか。救出作戦突入の際、後方支援部隊には、現場に居合わせる民間人の避難と保護を徹底させよ。五人の悪魔に対しての攻撃には情け
「了解しました」
「ジャガー、我等はあと5分程でそちらに到着する。ジェームスの身に生命の危機が迫らぬようなら、我等が着くまで突入は待て!」
「了解。作戦実行部隊は、作戦
「OKだ!!」
自分が育て上げた
「ペントハウスに、魔王セラヌは居るでしょうか?」
戦闘機ハリアーGR・7の
「うーん。カレンの居らぬ戦場じゃ。役者が
カーレルにもそれは分からないのだ。