選択
文字数 869文字
「ユキヤ、久しぶり。」
わが目を疑う。
目の前にいるのは、去年、病でこの世を去ったメグなのだ。ライトブラウンの瞳で僕を見つめている。
亡くなる直前は痩せ細って表情は虚ろだったが、以前のように日焼けした健康そうな体と微笑み。
ああ、そうか。
僕はさっき昼飯を食って、ソファーで昼寝をしていたんだったんだ。
夢の中に彼女が出てきてくれた。
亡くなって以来初めてだ。
「会いに来てくれて、ありがとう。」
僕は起き上がり、彼女に礼を言う。
「ユキヤこそ、こっちの世界に来てくれてありがとう。」
「?」
「せっかくだから、お出かけしましょう。」
「・・・ああ。いいね。」
僕は、夢の中での世界が、どうなっているか興味が湧いた。
外に出かけては、街を歩いたり、食事をしたり、お茶をしたり、ペットショップに入って真っ白な子犬を二人で代り番子に抱いたり。彼女はその子をえらく気に入って抱き締めた。
そして、部屋に帰り彼女と一緒に眠る。
こんな生活を一週間ほど続けた。
わかったことがある。
こっちの世界には、僕に関係があるものは何もないのだ。
家族も、友達も、通った学校も、行きつけのお店も。
彼女以外には。
夕御飯にメグが作ってくれたスパゲティ・ナポリタンを食べ終わって、紅茶を飲んでると、彼女が切り出してきた。
「あなたに、選んでほしいの。」
「?」
「この世界で私と一緒に暮らすか、元の世界に帰るか。」
「そんなことができるの?」
「うん、『ステイ ヒア』か、『ゴー ホーム』」と声に出すだけ。」
彼女がいないけど、僕との関わりがある世界。
僕と関わりのあるものは何もないけど、彼女がいる世界。
あまりにも難しい選択だ。
「今日までが、その期限なの。これを過ぎるとあなたは強制的にここの世界から追い出される。そして、どこに行くのかわからない。」
どうしても決断は必要なんだ。
僕は咄嗟に彼女を抱き抱え、
『ゴー ホーム!』
と叫んだ。
目を醒ます。
僕はソファーで寝ていた。
時は昼下がり。
明晰夢、というやつか。
こぼれている涙を拭おうとして、
僕は何かを抱いていることに気づく。
真っ白い子犬。
ライトブラウンの瞳が僕を見つめる。
わが目を疑う。
目の前にいるのは、去年、病でこの世を去ったメグなのだ。ライトブラウンの瞳で僕を見つめている。
亡くなる直前は痩せ細って表情は虚ろだったが、以前のように日焼けした健康そうな体と微笑み。
ああ、そうか。
僕はさっき昼飯を食って、ソファーで昼寝をしていたんだったんだ。
夢の中に彼女が出てきてくれた。
亡くなって以来初めてだ。
「会いに来てくれて、ありがとう。」
僕は起き上がり、彼女に礼を言う。
「ユキヤこそ、こっちの世界に来てくれてありがとう。」
「?」
「せっかくだから、お出かけしましょう。」
「・・・ああ。いいね。」
僕は、夢の中での世界が、どうなっているか興味が湧いた。
外に出かけては、街を歩いたり、食事をしたり、お茶をしたり、ペットショップに入って真っ白な子犬を二人で代り番子に抱いたり。彼女はその子をえらく気に入って抱き締めた。
そして、部屋に帰り彼女と一緒に眠る。
こんな生活を一週間ほど続けた。
わかったことがある。
こっちの世界には、僕に関係があるものは何もないのだ。
家族も、友達も、通った学校も、行きつけのお店も。
彼女以外には。
夕御飯にメグが作ってくれたスパゲティ・ナポリタンを食べ終わって、紅茶を飲んでると、彼女が切り出してきた。
「あなたに、選んでほしいの。」
「?」
「この世界で私と一緒に暮らすか、元の世界に帰るか。」
「そんなことができるの?」
「うん、『ステイ ヒア』か、『ゴー ホーム』」と声に出すだけ。」
彼女がいないけど、僕との関わりがある世界。
僕と関わりのあるものは何もないけど、彼女がいる世界。
あまりにも難しい選択だ。
「今日までが、その期限なの。これを過ぎるとあなたは強制的にここの世界から追い出される。そして、どこに行くのかわからない。」
どうしても決断は必要なんだ。
僕は咄嗟に彼女を抱き抱え、
『ゴー ホーム!』
と叫んだ。
目を醒ます。
僕はソファーで寝ていた。
時は昼下がり。
明晰夢、というやつか。
こぼれている涙を拭おうとして、
僕は何かを抱いていることに気づく。
真っ白い子犬。
ライトブラウンの瞳が僕を見つめる。