淡い陽のコンチェルト

文字数 373文字

「モーツァルトのクラリネット協奏曲の二楽章、秋の陽ざしなんだって。」

 ブラバン部で一緒に活動している、僕のガールフレンド(多分。)が、楽器ケースを両手でぶら下げ、公園の落ち葉をカサカサ踏みながら言った。

「何だいそれ? 」
「おととい、ドイツのクラリネットの名手のコンサートがあったでしょ。楽屋にお花をもっていったら、教えてくれたんだ。」

 彼女は、手のひらを陽にかざして透かしながら、つぶやく。

「やさしくて、ちょっぴり寂しい明るさ。・・・それ聞いて、モーツァルトも、秋も、ますます好きになっちゃった。」
その姿を見て、僕は彼女をますます好きになった。


 高い空の上から、そんな二人の会話を聞いていた秋。
 「うれしいね・・・でも。」

 もうすぐ冬に交代の時期だ。彼女とも、しばらくお別れだ。
 「忘れないでね。」

 秋は、そっと少女を抱きしめ、またね、と言った。
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