未来の思い出

文字数 513文字

とある街の総合病院にて

女医が自分の担当している患者の病室に入り、尋ねる。
「Aさん、お早うございます。最近どうですか? 」

「B先生、お早うございます・・・先生もご存知の通り、最近どころか過去の記憶を失くし、返答のしようがありません。」
「そうですよね。大変失礼しました。」

「いえいえ、とんでもありません。
 ・・・それに、これからの未来のことは、お答えできます。」
「そうなんですか。 では、『これからどうですか? 』って聞いてもいいのかしら。」

「もちろん構いません。・・・そうですね。これから僕は退院し、先生に交際を申し込みます。先生には快諾いただきます。」
「まあ、すごい自信ですね。それからどうなるのかしら? 」

「自信ではなく『これからの事実』です。楽しい交際期間を経て、僕たちは結婚します。」
「そうなの。その先のことはわかるの? 」
「はい。男の子と女の子を1人ずつ授かり、すくすくと、そして立派に成長していきました。」

患者は目を細めて語る。
「Aさんの話を聞いていると、なんだか『未来の思い出』みたい。」

「まさにその通りです。・・・今したお話は、あなたに看取られながら、『いまわのきわ』に思い浮かんだ、大切な私の思い出ですから。」
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