人鳥って書く くらいだからよお

文字数 539文字

前にも話したろ。俺は覚悟あってファーストペンギンをやってるわけじゃあない。
ペンギンの群れに、リーダーなんて要らねえ。
たまたま俺が先に動いちまったら、それをみんなが真似するだけだ。
そうやって俺たちは生きてきたんだ。

でも、聞いておくれ。
こんな俺にだって取り柄がひとつくらいある。
それは何だって?
特別に教えてやろう。

合唱を指揮することだ。

あんたらが知ってっかどうかわからないが、
俺たちマゼランペンギンは、お互いの意思疎通や求愛のために大合唱するのさ。
で、俺はそれを指揮する。

何のために指揮をするのかって?
決まってるじゃないか。

俺様のお目当ての飼育スタッフさんにイイトコ見せて、プロポーズにこぎつけるためさ。
ほら、見てくれ、この燕尾服じゃなかった、ペンギン服。
キマってるだろう?

あの娘(こ)はいつも、目をハートマークにして、俺が指揮する姿を見つめているぜ。

え、ペンギンが人間と結婚なんかできっこないって?

野暮は言わないでくれ。
やってみないことには、何も始まらねえ。

人間は、すぐに浮気だの別れた切れただのってやってるが、
俺たちペンギンは違う。
氷の下の青い海のように、情が深いのさ。

称号はダテじゃねえ。
俺様が、人間の娘(こ)をお嫁さんにする、
『ファーストペンギン』になってやろうじゃないか。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み