十年後の秘め事
文字数 1,356文字
「私ね、君とイケナイことしていると、すごく楽しいんだ。」
「え! また?」
彼女がコレを口にしたら、要注意だ。
前に町中華に二人で行ったときは、ドンブリの下にお金を置いて、僕の手を引っ張ってダッシュして店を出て、『なんちゃって食い逃げ』してみたり。猫カフェに行ったときなんかは、眉ペンシルでネコちゃんに凛々しい眉毛を描いたり。あれは、犯罪なのでは?
「な、何をお望みですか?」
彼女は、顔を横に向け、ニヤリとする。その先にはプールがあった。
僕と彼女が卒業した小学校のプールだ。
「こんな熱帯夜に、入らない手はないでしょ? 絶対気持ちいいよ。」
「あ、あの、水着なんか持ってきてないでしょ?」
「ここに、ヨガ・ウエアがあります。」
彼女はバッグをたたく。
「あの、僕は?」
「君は、そのままトランクスでオーケー。」
何で僕がトランクスタイプのパンツを履いているのを知ってるんだろう?
「え! 帰りはどうすんのさ?」
「ノーパンでオッケー。」
そう言うと、彼女は颯爽と低いフェンスを乗り越えた。
これでシラフだから、恐ろしい。いや、酔っ払ってたらヤバイか。
ぼくは周りを見回すと渋々彼女の後に続いた。
彼女は早速、コンクリでできた更衣室の脇で着替えている。
「コラ、こっちく来んな。・・・どうしても見たかったら来てもいいよ。」
その矛盾した呼びかけを無視し、反対側で服を脱ぐ。
さっそくプールに向かってに駆ける彼女。
「こら、プールサイドは走るの、禁止だぞ。」
「ハハハ、それ懐かしいね!」
彼女は、つま先をちょんと水につけ、水温を確かめる。
「やっぱ、ちょいぬるめね。」
そういうと、バシャーンと派手に水しぶきを上げてプールに飛び込んだ。
それが月明かりに照らされ、キラキラと輝く。
その中にる彼女。ちょっと絵になる。
「ほら、早くおいでよ! チョー気持ちいいよ。」
「わかった。」
僕は、控えめに飛び込む。
その瞬間、重大なミスを犯していたことに気がついた。
コンタクトレンズをつけっぱなしだ。
「ほら、水に潜って泳いでみ。水面を見上げると、綺麗だよ。」
「いや、その・・・」
「どうかしたん?」
彼女はニヤリをする。嗅覚が鋭い。ここで弱みを見せると、必ず何かをシカケてくる。
「別に、何でもないよ。」
僕は、ギュッと目をつぶったまま、水に潜る。
彼女の言葉を思い出す。『水面を見上げると、綺麗だよ』
・・・そこに彼女が泳ぐシルエットがあったら、最高だろう。
迂闊にも、思わず、目を開けてしまった。
僕は慌てて立ち上がった。
彼女は泳ぐのをやめ、バシャバシャと歩いて近づいて来た。
「ハハン⁉」
彼女は全てを理解した。そして潜った。
十秒ほどしたら、彼女は再びバシャバシャと僕のそばまで歩いてくる。
目の前で立ち止まると右手を軽く上げる。
人差し指と中指の間にはキラリと光るモノが二つ。
「ど、どうやって探したの?」
「潜ってみたら、プールの底で月明かりで光ってた。」
彼女のこういうプチ・スーパーなところが恐ろしい。
「ハハ、月明かりに溺れて、月明かりに助けられたね。」
ドキ。
「ありがとう。」
僕がコンタクトを受け取ろうとすると、彼女はさらに手を高く上げた。
「ただじゃ返さないわよ・・・こういう時の交換条件は?」
「・・・キス。」
「正解。」
小学生の頃の僕は、将来こんなところでイケナイことをするなんて想像もしてなかった。
「え! また?」
彼女がコレを口にしたら、要注意だ。
前に町中華に二人で行ったときは、ドンブリの下にお金を置いて、僕の手を引っ張ってダッシュして店を出て、『なんちゃって食い逃げ』してみたり。猫カフェに行ったときなんかは、眉ペンシルでネコちゃんに凛々しい眉毛を描いたり。あれは、犯罪なのでは?
「な、何をお望みですか?」
彼女は、顔を横に向け、ニヤリとする。その先にはプールがあった。
僕と彼女が卒業した小学校のプールだ。
「こんな熱帯夜に、入らない手はないでしょ? 絶対気持ちいいよ。」
「あ、あの、水着なんか持ってきてないでしょ?」
「ここに、ヨガ・ウエアがあります。」
彼女はバッグをたたく。
「あの、僕は?」
「君は、そのままトランクスでオーケー。」
何で僕がトランクスタイプのパンツを履いているのを知ってるんだろう?
「え! 帰りはどうすんのさ?」
「ノーパンでオッケー。」
そう言うと、彼女は颯爽と低いフェンスを乗り越えた。
これでシラフだから、恐ろしい。いや、酔っ払ってたらヤバイか。
ぼくは周りを見回すと渋々彼女の後に続いた。
彼女は早速、コンクリでできた更衣室の脇で着替えている。
「コラ、こっちく来んな。・・・どうしても見たかったら来てもいいよ。」
その矛盾した呼びかけを無視し、反対側で服を脱ぐ。
さっそくプールに向かってに駆ける彼女。
「こら、プールサイドは走るの、禁止だぞ。」
「ハハハ、それ懐かしいね!」
彼女は、つま先をちょんと水につけ、水温を確かめる。
「やっぱ、ちょいぬるめね。」
そういうと、バシャーンと派手に水しぶきを上げてプールに飛び込んだ。
それが月明かりに照らされ、キラキラと輝く。
その中にる彼女。ちょっと絵になる。
「ほら、早くおいでよ! チョー気持ちいいよ。」
「わかった。」
僕は、控えめに飛び込む。
その瞬間、重大なミスを犯していたことに気がついた。
コンタクトレンズをつけっぱなしだ。
「ほら、水に潜って泳いでみ。水面を見上げると、綺麗だよ。」
「いや、その・・・」
「どうかしたん?」
彼女はニヤリをする。嗅覚が鋭い。ここで弱みを見せると、必ず何かをシカケてくる。
「別に、何でもないよ。」
僕は、ギュッと目をつぶったまま、水に潜る。
彼女の言葉を思い出す。『水面を見上げると、綺麗だよ』
・・・そこに彼女が泳ぐシルエットがあったら、最高だろう。
迂闊にも、思わず、目を開けてしまった。
僕は慌てて立ち上がった。
彼女は泳ぐのをやめ、バシャバシャと歩いて近づいて来た。
「ハハン⁉」
彼女は全てを理解した。そして潜った。
十秒ほどしたら、彼女は再びバシャバシャと僕のそばまで歩いてくる。
目の前で立ち止まると右手を軽く上げる。
人差し指と中指の間にはキラリと光るモノが二つ。
「ど、どうやって探したの?」
「潜ってみたら、プールの底で月明かりで光ってた。」
彼女のこういうプチ・スーパーなところが恐ろしい。
「ハハ、月明かりに溺れて、月明かりに助けられたね。」
ドキ。
「ありがとう。」
僕がコンタクトを受け取ろうとすると、彼女はさらに手を高く上げた。
「ただじゃ返さないわよ・・・こういう時の交換条件は?」
「・・・キス。」
「正解。」
小学生の頃の僕は、将来こんなところでイケナイことをするなんて想像もしてなかった。