第27話 思わぬ挑戦者
文字数 1,339文字
夢にも思っていなかった。
まさか、見ず知らずの高校生たちの思いを背負うことになろうとは……。
大会当日までの、このプレッシャーは重すぎる。
だが、それに耐えながらバイトに出た僕の前には、さらなる試練が待ち構えていた。
ムチャクチャな理屈だった。
僕はちらっと店長を見やる。もともとモグリのバイトなのだ。この上、過労で病人まで出したらタダでは済まないだろう。このまま平穏無事な人生を送りたかったら、板野さんを追い返すしかない。
どっちかというと、その目は僕よりも、紫衣里を見ていたような気がする。
それはそうとして、場を弁えないほどに切羽詰まった鋭い声に、店内の客たちがぞろぞろと集まってきたのには参った。
eースポーツのプロに集まるのとは質の違う、好奇の視線にはさすがに腰が引けた。
だが、そんな僕をたしなめるように、紫衣里は冷ややかに言った。
僕の気持ちなど全く意に介さない紫衣里。
自分では手を下さないくせに注文だけは多い店長。
そのどっちにも、僕はイライラきていた。それでもとりあえずは、やるしかない。
オーダーどおりに。
やりたくない勝負を受けるための、最大限の妥協だった。
だが、それでさえも、板野さんの自尊心には少なからぬ傷を与えたらしい。
どういう意味かは、ちょっと量りかねた。
だが、とにかく僕の技は、見ただけで盗めるほど安っぽいものではない。
同じ条件で戦うのは、かえってフェアじゃない気がした。