第33話 綺麗なお姉さんとの束の間の交流
文字数 1,524文字
準々決勝が終わった後、紫衣里はしばらく僕とは口を利かなかった。
さっきのフィービーのアレは不可抗力としか言いようがないのだが、それでも面白くはないらしい。
そういうのを、「怒っている」という。
女2人が笑い合うのを、言葉の通じない男としては黙って見ているほかはない。
そうこうするうちに次の試合が始まって、僕は何とかカヤの外のわびしさを逃れることができた。
ここまで勝ち上がってきたプレイヤーたちの激闘が、僕の闘志を高ぶらせていく。
佐藤みたいな慇懃無礼さで、紫衣里が解説してみせる。
カンカンに燃え上がったさっきの闘志は、それだけで一気に萎えた。
僕と紫衣里の間に、夏のさなかとも思えない寒い風が吹き抜ける。
自分でも説明臭いと思うが、こうでもしないと会話が成り立たない。
傍で聞いていたフィービーが、また笑った。
さらに試合は続く。
見ている僕たち3人も、次第に熱くなって試合にのめり込んでいった。
興奮したフィービーが僕と紫衣里をまとめて抱きしめようとする。
また、胸が顔に当たりそうになるのを理性でかわして立ち上がる。
顔を塞がれて呻くのは、紫衣里だけになった。
そして、3組目の試合がコールされると、フィービーは立ち上がって僕の肩を叩いた。
いつになく落ち着きを欠いたその目は、会場内にいる誰かを探しているようだった。
実際、歓声も物凄かったのだ。
フィービーの言った通りだった。
いつの間にか試合は終わり、瞬殺されてガックリうなだれる敗者を後に、勝者が悠々とステージを下りるところだった。