第13話 衣食に関するリアルな悩み・告白編
文字数 1,590文字
紫衣里は、そのまま力尽きて布団の上に果てた。
僕も、床の上に転がる。
僕はファスナーの開いた寝袋から跳ね起きると、大急ぎでTシャツと短パンに着替えた。
果てしなく軽くなった財布をポケットに、最寄りのコンビニへと走る。
まだ、スーパーは開いていなかったからだ。
目をしょぼつかせながら、紫衣里はずるずると布団から這い出した。
さすがに下着一枚で寝かすのはアレなので、白地に青のストライプが入ったパジャマの上下は買ってある。結構高かったが、それがこのアパートの台所にトドメを刺した最終要因でもあった。
そして、微かに残った息の根は今、紫衣里の胃袋に収まろうとしていた。
何事もなかったような顔をして、それはないんじゃないかとさすがに思った。
これで、財布は完全に底を尽いた。怒る気力もない、というか、どうしても紫衣里に強く出られない。
そんな僕は甘いと、自分でも思う。
こう言うのがせいぜいのところだ。
紫衣里はというと、今気づいたとでもいうような顔で、ちょこんと正座した。
いや、お粗末なのは僕の懐だった。
もう、1円もない。
ここで紫衣里と一緒に生きていくためには、たった1つしか方法がなかった。
紫衣里が気にしてくれただけで充分だった。
あの12万円のせいでいろいろと気まずいが、背に腹は代えられない。
今日にでも、頭を下げてシフトを入れに行くつもりだった。
この辺の事情は、紫衣里も察してくれていたようだった。
だが、俺には紫衣里を責める気はない。恩を着せる気もない。
もしかしたらクビになってるかもしれなかったが、そのときはそのときだった。
もう、あの12万円に未練はない。
だが、紫衣里が気にしていたのは、そこではなかった。
紫衣里がパジャマの胸元を開いたのを見て、僕は思わず目をそらした。
だが、紫衣里は硬い声で囁く。
どうも心配して……というかちょっと期待していたのとは違う展開だった。
拍子抜けして勢いも削がれ、ぽかんとしている僕につきつけられたものがある。
僕は即答した。
金が欲しかったら、働けばいい。それだけのことだ。
実をいうと、もうe-スポーツのプロになることなんかどうでもよくなっていた。
何なら、高校を辞めて紫衣里のために働いたっていい。
だが、そこまで覚悟を決めた僕への返事は、予想を遥かに超えていた。