第7話 もうひとりの、気になる彼女
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そう言う店長の歯切れも悪い。アルバイトがもう1人いるからだ。
限界があるのは、店長も同じことだ。それほど流行っているゲームセンターでもない。
1日にアルバイトは2人もいらなかった。
早めに出勤して次のシフトを待つ彼女にそう言われて、僕は曖昧に微笑む紫衣里の顔を見た。
情にもろい店長が、おずおずと僕に言った。
板野さんのところは母子家庭で、生活は結構苦しいらしい。それでも無理して、遠くに見える金華山のふもとにある中高一貫の私学に編入したのは、中学でいじめに遭ったからだ。
板野さんは健気に言ったが、このアルバイトも実は校則違反だ。
学校から離れたところでこっそり働く彼女を、店長は巧みに隠している。
だが、それでも胸が痛むのは、僕の良心がうずくからだ。
一生に一度となる修学旅行を取り上げるわけにはいかない。
板野さんはというと、僕のことも気にしてくれていた。
でも、僕はというと、紫衣里の表情が気になって仕方がなかった。
休憩もなにも、もうすぐ午前中のシフトは終わりだ。
ここぞとばかりに店長は言った。