第6話 ひとつ屋根の下の彼女と、そのリスク
文字数 1,352文字
まさか、この美少女とひとつ屋根の下で暮らす羽目になるとは思わなかった。
ガラスのような澄んだ目で見つめられると、もう沈黙するしかない。
確かに僕は下宿生なので、親の目は関係ない。1人暮らしのアパートに2人住んでいるのを管理人が咎めなければ、別に問題はなかった。
嫌も応もない……こんな可愛い子と一緒なんて。
確かに僕は下宿生なので、親の目は関係ない。1人暮らしのアパートに2人住んでいるのを管理人が咎めなければ、別に問題はなかった。
嫌も応もない……こんな可愛い子と一緒なんて。
問題は、あの老人の出した条件だ。
そんなことは何でもなかった。
彼女の名前は、
ただ、分かったことは1つだけあった。
次の日のことだ。
夕食のテーブルの前で、僕は絶望のどん底にいた。
バイトが終わって、同じショッピングモールの食料品売り場へ行ったら、僕たちは注目の的になった。
その理由は、紫衣里が現実離れして可愛いかったということだけじゃなかった。
肉とか野菜切るのめんどくさい。
カレーなら何でもトッピングできると勘違いしてる、どっかのチェーン店か。
フライパンとか油とか使いたくない。水餃子も熱くていやだ。
食い物へのこだわりにも限度ってものがある。
暑苦しいのイヤなんだよ。
くだらねえ。
結構体力いるんだよな。
もう食うものがねえ!
もちろん、ウソである。
きりがないからこのへんにしておく。
そう、可愛い顔して、よく食べるのだ。この娘は。一緒に暮らすとなると、食費もかかる。
この日もショッピングカートは食料品が山盛りで、恥ずかしいことに人目を引いて仕方がなかったのだ。
親からの仕送りの一切は止まっていた。e-スポーツのプロになるのを反対されているからだ。だから僕は、あちこちの大会に出て、何度も優勝してみせている。
その傍らで貯めた専門学校進学資金が、12万円。
その傍らで貯めた専門学校進学資金が、12万円。
これが、美少女とひとつ屋根の下で暮らすことの現実だった。