恋をした

文字数 382文字

最近、泡立ちが良くない。シャンプーも食器洗剤もブクブクしても元気なく項垂れてしまう。

「おいおい、どうしたんだよ?泡?前みたいにシャキッと角立ってくれよ?」
「いや……泡はそんなに泡立たない方がいいでしょう?洗濯洗剤が言ってましたよ?今時、無駄に泡立つもんじゃないって。泡切れが悪いのは環境に優しくないそうじゃないですか?」

泡はつれない事を言う。けれどツンと尖って見せてもそこは泡。尖りきれずにしょんぼりと俯いていく。

「俺はブクブクに泡立つ方が好きだぜ?どうしちまったんだよ?お前?」

そう言うと泡は観念した様にポツリと垂れた。

「……好きな子がいるんです。」
「好きな子?!」

どうやら泡は恋煩いで元気が無いらしい。

「その子は同じ様に透明の膜の中に気泡を持っていて……。でも泡より丈夫で……。弾ける音がとても可愛らしいんです……。」
「へぇ?どんな音?」
「プチプチって……。」
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