豆腐屋とところてん突き

文字数 377文字

ププーとラッパの音がする。

週に二回ほど豆腐屋さんが来る。
白い軽ワゴン車。

「お豆腐買ってきて。」

母がそう言って私にアルミ製のボールを渡す。私は待ってましたとばかりに目を輝かせる。

「ところてん買って!」

私はところてんが大好きだった。
母も高いものでもないし、お菓子をねだられるよりはいいと思ったのかよく買ってくれた。私はいつもの場所に停まっているおじさんの所に走る。

「絹ごし一丁とところてん下さい。」
「はいよ。」

おじさんが荷台の桶に手を突っ込み、真っ白なお豆腐をボールに入れてくれる。スーパーのよりも大きくて重い。
そして別の桶に手を入れ、ところてんの寒天棒とところてん突きを水から上げる。
細長い寒天がところてん突きに納められ、チュルンと細切りになってビニールに流れ込む。

私はその作業を見るのが好きだった。

ところてんが生まれるその瞬間、いつも夏の匂いがしていた。
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