一子相伝のミートソース

文字数 373文字

「あら!清くんのお母さん!久しぶり!」
「やだ!のぶくんのお母さんじゃない!」

夕暮れ時。
買い物に勤しむ人々の中、そんな会話が聞こえた。

「お夕飯、どうするの?」
「今日はちょっと残業したから、ぱぱっとミートソースにしようかと……。」

ミートソース。

その単語が出た瞬間、辺りがざわりと揺れた。
緊張が走り、皆が固唾を飲む中、清くんのお母さんはフフンと高飛車に笑った。
しかしのぶくんのお母さんは動じなかった。

「……あなたも、ご家庭の味を継承しているのね……。」
「という事は、のぶくんのお母さん……あなたも……。」

その瞬間、わっと周囲の人が蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
睨み合う二人。

ミートソース。
それは一子相伝、引き継がれる家庭の味。

「ここで会ったが百年目!」
「いざ!尋常に勝負!」

ミートソースの頂点を目指し、赤きソースの煮えたぎる戦いが、今、幕を開けた。
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