カメレオンあんぱん

文字数 384文字

「あ!」

パンに齧りついていた息子が、そう声を上げた。不思議そうな顔をした後、不服そうに私を見上げる。

「パパ!パンが変!よっちゃんのパンじゃない!」

息子はまだ自分の事を「よっちゃん」と呼ぶ。それが可愛くて思わず笑ってしまった。しかしそれでは不機嫌になるというもの。ぷうっと頬を膨らませて怒る姿は更に可愛くて笑いそうになるが、真面目に対応した。

「どれどれ?」
「いつものよっちゃんのパンじゃない。甘いけど黒いの。」
「ああ、大丈夫。これカメレオンあんぱんだよ。」
「カメレオンあんぱん?」
「そう。カメレオンはわかるよね?」
「知ってる!忍者なの!」
「うん。これはね?他のパンに化けてた忍者パンなんだよ。よっちゃん凄いね!たくさんのパンの中に隠れてたカメレオンあんぱんを見つけるなんて!」

息子はそう言われ、ちょっと誇らしげだった。そしていつものパンでないあんぱんを得意げに頬張った。
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