ホタルノヒカリ〜蒸し返しダンサーに

文字数 410文字

思うところはある。
かと言ってショーステージが終わった舞台で一人踊っても仕方がない。
観客もステージスタッフも困惑してしまう。

それにどうせ踊るなら、誰もいない世界で踊りたい。

誰も見てない。
誰にも何も咎められない場所。

そこで一人で心ゆくまで踊りたい。

何の意味もなくても。

『本日のプログラムは全て終了しました……観客の皆様はすみやかに……』

蛍の光が情緒を含んでゆったりと流れ出す。
だがどうして閉園閉館に蛍の光なのだろう?

この曲は綺麗だ。
でも別れの歌だ。

長い月日苦労を共に重ねた学友との別れ。
胸に湧く沢山の言葉を一言「幸あれ」と、恙無く伝えるに留める。
その一言に込められた意味が、多くを語るよりも雄弁に胸の内を明かすのだ。

幸あれ。

私に積み重ねた月日はここにはない。
けれど別れがあるなら「健やかで幸多からん事を」と言って別れたい。

誰もいないステージ。
終わったショー。
そこで踊るのは蒸し返しになる。

だから歌う。
誰にも聞き取れない声で。
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