曇り空
文字数 369文字
世界で唯一、空を味わえるカフェバーを訪ねた。
空を採取する伝統技を持つ民族がいる事から、このカフェバーだけが空を販売する許可を持っている。
「いらっしゃい。」
私が尋ねると観光シーズンが過ぎた事もあり、断崖にある店は落ち着いた雰囲気だった。
招かれるままカウンターに座る。
「どちらから?」
「日本です。」
「ああ、四季がお美しいですね。空をお飲みに?」
「ええ。」
私がそう言うとマスターは窓から身を乗り出し、長い棒で空を綿飴みたいに絡めて採取していく。
それが手際よくシェイクされ、カクテルグラスに注がれた。
「どうぞ。今日の空は個人的にはお薦めです。」
「曇り空が?」
「ええ。曇り空は、堪えた涙が淡く弾け、それでも負けるものかという心の強い味がします。」
私はその空を飲んだ。
何だか少し泣きそうになった。
「人生の様でしょう?」
そう、マスターは静かに微笑んだ。
空を採取する伝統技を持つ民族がいる事から、このカフェバーだけが空を販売する許可を持っている。
「いらっしゃい。」
私が尋ねると観光シーズンが過ぎた事もあり、断崖にある店は落ち着いた雰囲気だった。
招かれるままカウンターに座る。
「どちらから?」
「日本です。」
「ああ、四季がお美しいですね。空をお飲みに?」
「ええ。」
私がそう言うとマスターは窓から身を乗り出し、長い棒で空を綿飴みたいに絡めて採取していく。
それが手際よくシェイクされ、カクテルグラスに注がれた。
「どうぞ。今日の空は個人的にはお薦めです。」
「曇り空が?」
「ええ。曇り空は、堪えた涙が淡く弾け、それでも負けるものかという心の強い味がします。」
私はその空を飲んだ。
何だか少し泣きそうになった。
「人生の様でしょう?」
そう、マスターは静かに微笑んだ。