丸くふっくらした温もり

文字数 326文字

その肌は白くきめ細かい。
ふっくらと丸みを帯びるそれは、ほんのりと香り立つ温かさで私を包む。

かぶりつけば程よい弾力。
あゝ……。
幸せはここにあるのだと秘めた熱に包まれながら思う。
桃源郷が閉じた瞼に浮かぶ。

君を見るとそれを思い出す。
そして無性にかぶりつきたくなる。

季節が変わり、暗くなるのが早まる。
家路を急ぐ私の目に、明るく浮かび上がる魅惑の御殿が飛び込んでくる。

あゝ、駄目だ……。
そう言いながら吸い込まれていく。


「いらっしゃいませ〜!」


そう営業スマイルを浮かべる女性の横にお目見えしたタワー。

『中華まん、温まってます』

その張り紙にゴクリと喉が鳴る。

君の季節が巡ってきた……。

その温もり。
その柔らかさ。
美味しさ……。

私は誘惑に負け、思うがままそれを頬張った。
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