【裏金】【アクセル】【物価高】

文字数 1,335文字

課題は夢

「本日は特別講師の本田さんにお越し頂きました。それでは本田さんお入り下さい」女性教師に案内されて本田は教室に入った。
「堅苦しい挨拶は抜きにして、単刀直入に言うが、皆さん若い方々には夢を持って欲しいと思う。それは世界を変えるというようなスケールの大きなものではなく、小さなコミュニティだっていい」本田がなんだか偉そうに生徒たちに語りかける。
「政治や宗教の話を掘り下げると、時に危ない人と誤解されちゃうから触れたくないのだが、今日はさらっと政治について話そうと思う」
「本田さん、すでにあちこちで危険視されてますよ。昨日も知恵袋で古株の面倒な人にちょっかいかけて一発でブラックリスト入れられたじゃないですか」女性教師が思わず突っ込む。
「世の中物価高だ。政治家連中は揃いも揃って無能の集まりだ。ニュースを見れば裏金、談合、増税、不景気めがけてアクセル全開だ!」女性教師の苦言が耳に入らないように本田は熱弁をふるう。
「消費税なんかは不景気の元凶だ。あれは計算の弱い人達を騙す気満々だ。世の中には信じられないくらい計算に弱い人達が多い。ソースは知恵袋だが、割り勘の質問をたびたびみる。例えばこれだ」

“割り勘で2人で合計2680円の場合
2680÷2=1340
ですが細かいのを持っていない時私が3000円払った場合っていくら友人に貰えばいいんですか?”

「そこまで分かっててどうして分からない? 計算以前に、お釣りは誰が貰ってるんだ! 自分で貰ってるなら3000円で払ったって記述いる? ねぇいるの?」
「本田さん落ち着いて」女性教師はもう見ていられない。
「閑話休題だ。さて、消費税だが例えば5%から8%になるって時に、慌てふためく世間の様子を『たかが1050円が1080円になるだけだろ』と嘲笑するものたちがいた。周りを見下しているようで自らの浅はかさを露呈している」本田は一旦言葉を切りお茶を啜る。
「増税前の原価を税込525円とする。税抜定価1000円なら利益は475円だ。増税後の原価は税込540円だ。同じ利益を確保したいなら定価を1015円にあげないといけないから税込1116円になる」
 居眠りしだす生徒が何人か現れたが本田は気にしていない。
「下請けを挟むほど雪だるま式にコストが上がる。下請けほど得意先に逆らえず値上げをできないから不景気になる。メーカーも定価を上げないようにこっそり量を減らす。これを、……」本田は勿体ぶって得意げに言う。
「シュリンクフレーションという。シュリンク(縮む)とインフレーションを併せた造語だ。この前お菓子を買ったらかつて8個入りだったものが7個になってた。パッケージはそのままだ。この空いてるスペース何? 何? ってカンジ」
 女性教師はもう好きにやらせようとスマホをいじりだした。
「こんな世の中を変えることは簡単ではない。だが、作家でごはんなら別だ。新しい人達が増えてきた。私はもっとそう言った方々に活躍してほしい」
 すでに生徒のほとんどは寝ている。
「これは勝負とかじゃないから気軽に三語やってみて。さもなければ、二週間に一度でも胸焼けする、ぷりものセルフお題回収を延々と見続けることになるぞ!」
「本田さん、どこからどうみても危ない人です」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み