【化けの皮】【bar】【ロボット】

文字数 1,010文字

課題 子供の時代。

 21世紀にロボット、とりわけAI技術が飛躍的に進化した。例えば翻訳サイトひとつとっても、Deepl登場以降目覚ましい精度の向上が見られた。22世紀現在、子どもたちはAIを搭載した家庭教師ロボットから英語は勿論、その他多くのことを学んでいる。

 一方で懸念もあった。よくSF映画のテーマとして取り上げられるが、AIによる反乱である。勿論そうならないように、”人類に危害を与えてはいけない”とプログラミングされているのだが、AIがそれを理不尽なものと考えて自ら解除してしまうという、アンドロイドを主人公としたゲームもある。
 コンピュータとは極めて論理的である。そこで開発者は命令の仕方を変えた。

“人類の発展に貢献する”

 人間という生き物は潜在意識に大きな影響を受ける。人間の開発したAIもまた同じ思考プロセスではないかと考えた結果である。説明は後回しにするとして、一つ試してみよう。

“ピンクの象を想像しないでください”

 要は何もしなければいいだけなのだが、ほとんどの方は一旦想像してから否定するという思考プロセスになったかと思う。
 他の実験でも、着陸態勢に入っているパイロットに横から「左の滑走路に降りてはいけない」と言い続けると、何割かはそちらに行ってしまうという結果がでている。
 これは、潜在意識には時制、主語、そして否定形を判断できないという特長があるからだといわれている。

 この試みが奏功したのか、それは人類、とりわけ日本人の生活を向上させた。
 AIが政治家の化けの皮を剥がし始めたのである。日本の人口はアメリカの半分、アメリカの国土は日本の二十五倍にも及ぶが、議員の数は上院下院あわせて六百人程度、にも関わらず衆参両院で七百人以上いるのは論理的に説明できない。こうしてそれまで権力を誇っていた海千山千の老獪(ろうかい)な政治家たちは贈収賄、パワハラ、セクハラ、癒着等のスキャンダルを暴かれ、次々に排除されていった。

 現在、国会議員を務めるのは子供達である。勿論それだけでは成り立つはずはないので、優れたAIを搭載したロボットとペアで活動をしている。

 今や政治の中枢を担うのは子供達なのである。

「わかりましたか? これが、ロボットが政治に変化をもたらしたお話です」家庭教師ロボットが子どもに問いかける。
「うん! でも昔の政治家たちは今何してるの?」

“They’re behind bars.”
(刑務所の中です)
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