【闇】【破壊】【人工の存在】

文字数 605文字

課題: ジャンルは大衆小説

「ヤス、見積もりできたか?」
「はい親方、これです」
「見せてみろ」親方はヤスから見積書をひったくる。
「お前分かってねぇなぁ」
「え、そうですか? オレ、その北川邸を実際見に行きましたよ。確かに車が突っ込んだところは滅茶苦茶に破壊されてましたけど、割と補修工事自体は簡単だと思いますけど」
「そうじゃねぇ、なんでこの工事に三人工(さんにんく)なんだ。お前は人工(にんく)の存在をわかっちゃいねぇ。分かるだろ、人件費だ。一人増やせばその分丸儲けだろ」
「さすがに悪どくないっスか?」
「本当にダメだなお前は。いいか、商売なんてのは女と一緒だ。要は駆け引きだ。覚えとけ」
「じゃあ四人工にしてファックスしときます」
「おう」

 そして翌日

「ごめんください」
「はい」事務所を訪れたモデルのような美女にヤスの声は上ずる。
「修理工事の見積をお願いしている北川ですが、近くを通ったものですから直接伺いました」
「親方! 北川さんがお見えです」
「ど、どうも」親方の態度もぎこちなくなる。
「送っていただいた見積書なんですけど、ちょっとお高くないかしら?」
「ちょっと見せてください。えっと、あ、四人工になってますね。ここ三人工で大丈夫なんで直しときますよ。すいませんね、うちのやつがデキ悪くて」
「それじゃお願いしますね」そう言って北川は事務所をでた。
「べっぴんさんだったな。オイ、なんだヤスその目は」
「業界と親方の闇を目の当たりにしている目です」
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