【三夜】【スイカ】【羊】

文字数 1,369文字

課題: ひらがなの「い」使用禁止

「ジャック君、大変だ!」
「どうしたんですか警部?」
「怪盗Qからの挑戦状がメールできた」
「えっと、それって杉下警部と亀山さんの話じゃなかったですか? それに怪盗Qって南極でしょ?」
※【大仏】【たぬき】【フライパン】参照
「そこは触れちゃダメだよ。シリーズ物にするにあたって、他所から拝借したキャラを延々と使えんからな」
「世界観無視ですね。僕たちクイズカテ出身ですし」
「とにかく本題だ。まぁ見てくれ」

 怪盗Qの挑戦状
 小生は今、大富豪竜泉家が所有するN県詩野にある別荘に居る。無能な警察職員、小生を捕まえる千載一遇のチャンスだ。
 ただ、君たちの知能では小生の隠れてる場所まではわからんだろう。そこで、ここはクイズと洒落込もう。
 【三夜】【スイカ】【羊】
 この三語に共通する言葉がヒントだ。だが慌てるな。直接共通する物は無しだ。そこから一回連想してもらう。つまり、【カエル】なら、おたまじゃくし、そこから連想して例えば音符とかな。カエルから直接音符には結びつかんだろ?
 特別サービスとしてヒントをやろう。私が隠れてる場所は以下の四つの中のどれかだ。

 A タンス
 B 床下収納庫
 C 車
 D トイレ

 読者への挑戦状
 さて、怪盗Qの隠れた場所はどこでしょう?


「どうだろう? ジャック君、どうもぷりもが最近読んだ『時空旅行者の砂時計』から、舞台設定とか読者への挑戦状とか拝借してるようなんだが、さっぱりわからん」
「相変わらず世界観無視ですね」


 怪盗Qの視点

 困ったことになった。竜泉家の別荘に忍び込み、金目の物を奪おうと思って潜入したものの、知らぬ間に閉じ込められてしまった。ドアや窓は外からはめ殺し。どうやら自力で脱出するのは不可能のようだ。
 ここは、無能な警察を利用して脱出経路を作ってもらうこととしよう。小生は警察を挑発する挑戦状を送信した。


「警部、怪盗Qの居場所がわかりました」
「本当か? ジャック君、字数を気にするあまり巻きすぎにもほどがあるぞ」
「まず、三夜ですがここでは新婚三日目の夜にモチを食べる風習をさします。つまりモチなんです」
「スルーされちゃったよ」
「次に、スイカです。そこからまずはスイカ割りです」
「ふむ」
「最後に羊ですが、これは羊羹(ようかん)としましょう」
「モチに、スイカ割りに、羊羹か、全く共通点がわからん」
「竿です。モチ竿は竿にモチをつけたものです」
「じゃあスイカ割りは竿を使うってことか? ただの棒切れとは違うのか?」
「日本スイカ割り推進協会によると、……」
 そんなのあるんだと言う警部をよそにジャックは続ける。
「棒の長さには正式なルールがあって、直径5cm以内、長さ1.2m以内です、そして使える棒は特に決まってなくて、竹刀でも新聞紙でも、物干し竿でもOKです」
「厳格なのかテキトーなのかわからんね」
「あと羊羹は数える単位が棹(竿)なんです」
「ジャック君、それで答えは一体?」
「Aのタンスです。これも数える単位が竿ですから」
「前から思ってたが君は一体何人なんだ?  とにかく緊急配備だ」
「今日から別荘解体工事するって噂で聞きましたよ」
「よし、ほかっておこう」
「僕は知りませんよ」


 小生の周りで轟音が聞こえる。何事かとタンスから出ようとしたが何かがつっかえて扉が開かん。小生は叫んだ。
「誰か開けて!」
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