【暁】【迷信】【最速のツンデレ】

文字数 1,134文字

ジャンルは「ラブコメ」

 ケータイのアラームで、あたしは目を覚ます。時間を見るとすでに午前三時半。おかしいわ、三時にアラームセットしたはずなのに、きっと無意識にスヌーズしちゃったのね。他の女子なら間に合いっこないかもだけど、あたしは全然大丈夫。だってあたしは最速のツンデレ。何人(なんびと)たりとも、あたしのスピードについてくることなんてできやしないわ。
 どうして、そんなに早起きしてるかですって? 何でそんなこと見ず知らずの読者のあなたに教えなきゃいけないの? あたし急いでるから余計なこと聞かないで!

 暁の茶事(ちゃじ)よ。

 そんな難しい言葉聞いたことないでしょ。いいわ、一つだけ特別に教えてあげる。
 厳寒の午前五時くらいから初める茶事よ。どうしてそんな時間にやるかですって? あなたそんなことも分からないの? 一つだけって言ったでしょ! 自分で考えなさい。

 夜が白み始める景色を楽しみながらお茶するのよ。

 いい? あなたに教えてあげたわけじゃないんだからね! ただの独り言なんだから。変な勘違いしないでよ。
 あ! もう! あなたが余計なこというから、櫛を落としちゃったじゃない。でも問題ないわ。もうセットは終わってる。

 どう? あっという間に着付もすんで準備万端よ。なんて言っても、あたしは最速のツンデレなんだから! でもうかうかしてられないわ、早く行かないと。

 あ! 急いでたら、さっき落とした櫛を跨いじゃったじゃない! あなたのせいよ、どうしてくれるの? 櫛を跨ぐとお嫁に行けなくなるのよ! 何ですって、そんなの迷信? し、知ってるわよ、ちょっとあなたを試しただけよ。得意げな顔してバカじゃないの?

 さ、寒いわ。慌てて着付したから下にババシャツ着込んでくるの忘れちゃった。ムリ、こんなんでシンシンと冷える茶室で、よそ行きの顔を保ってお茶するなんてあたしには不可能だわ。
 え、何これ? カイロ? あなた何もわかってないのね。茶道で着物を着てカイロなんて、侘び寂びも何もあったもんじゃないでしょ!
 ちょっと、何しまってるの。今回だけ特別に貰っておいてあげるわ。貸しなさい!
 今度は何? あったかいコーンスープ買ってきたよですって。あなた知らないの? あたし、おしるこ派よ。まぁいいわ、貰っておいてあげる。

 あー、櫛跨いじゃったのどーしよ。そんなことまだ気にしていたのかですって? いいでしょ別に。どうせあなたに関係ないんだから。
 え? その時は、あなたがあたしを(めと)る?
 ちょ、ちょっと、いきなり何言いだすの? 誰があんたなんかと。
 あなた、この後用事あるの? もう、鈍いわね、何度も言わせないで。一緒にデートしてあげるってこと。
 終わったらメールするから家で暖かくして待ってるがいいわ!
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