第27話 流れる涙で作ったラーメン、召し上がれ
文字数 1,560文字
落ち込んでません、
現実を受け入れられないだけです。
なんで、なんで私の元から離れて行ってしまったのですかぁ……。
それはおそらく、お店を続けるためのお金が無くなったからですわ。
お店を続けるお金が無くなったのは、お客さんがお店に来なかったからですわ。
お客さんがお店に来ないのは、お客さんが料理を好まなかったからですわ。
すなわち、ニーコの好きなラーメン屋は不味いという……
……悔しいのは、そのすぐ隣にあるラーメン屋は繁盛していますわ。
この差はいったいなんなのですか……
人気のラーメン店は行列が出来ていますわ。
行列が出来ているということは、多くの人が好んでいるということ。
多くの人が好んでいるということは少なくとも美味しいという証明になりますわ。
その証明があれば、自分で確認することなく確実に美味しいラーメンに辿り着けますわ。
そのため、多くの人が人気のラーメン店に行くのでしょう。
そうして、また多くの人が集まり、ラーメンを食べ、それを見た人がそのラーメンを食べる。こうして行列はどんどん長くなっていくのですわ。
……そういうことだったのですね。
では、あのお店には行列が無かったため、多くの人が不審に思ってしまったのですね。
だから、お客さんが入らなかったということですわね。
そうですわよ。一からお客さんを集めるのは、難しいのですわ。
じゃあ、あのお店は悪く無かったということですわね……
全てのお店が、最初はお客さんが誰もいない所から始まりますわ。
それでも、美味しいお店はちゃんとお客さんを増やしていますわ。
行列が無いからお客さんが来ないなど、言い訳に過ぎませんわ。
結局の所、ニーコの好きだったラーメン屋さんはクソ不味く、泥を啜るかのよう……
逆に聞きますが、ニーコはあのラーメン屋のどこが好きだったのですか?
ちなみに私はラーメンが本当に不味いと感じたため、ライスとチャーシューしか頼みませんでしたわ。それも不味かったのですが。
ラーメンがテーブルの上に置かれた時に感じる排水溝のような臭い……、禍々しさすら覚える麺とスープの色……、一口頬張れば五感全てが拒絶の反応を示すあの感覚……
当たり前ですわ。
そんなゲテモノを作る大バカ者は、あの店主ぐらいしかいませんわ。
大丈夫ですわよ、またすぐに美味しいラーメン屋が見つかりますわ。
あるいは、その辺の泥水でつけ麺をすればだいぶ近い味になると思いますわよ。
ニーコ、今日は本部になんて報告すればいいのですか……。
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【背景画像】
夜のホテルの一室:ぽんこ様(illustAC様より)
【アイコン使用画像】
毛布:フリーイラスト・クラシック様(https://freeillust-classic.com/)
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