第10話 底辺を担ってくれる存在があるため、今日も私達は元気です

文字数 1,402文字

……。
ニーコ、何を見てるのですか?

お姉様。

今、この国のアニメという物を見ていましたわ。
それは、良いことですわ。

本部からも、資料調査は過度でなければ良いことと言われていますわ。

失礼しました。

正確には、見終わったアニメのレビューを見ていましたわ。

それが良いことなのか、私には判断しかねますわ。
ちなみに、そのレビューとはなんですか?
アニメを見た人が感想を言う場ですわ。

そこで皆が集まって各々の感想を言うのですわ。

それは素晴らしいですわね。

ちなみに、どのような感想があるのですか?

読み上げますわ。
『これを見て、何も無かった人生が輝いて見えるようになりました。ありがとう』
『これを見て、毎日の仕事が頑張れるようになりましたっ! このアニメに出会えて良かった!』
『予測不能な展開、秀逸なセリフ回し、この奇想天外なアニメは常人では作れない、まさに神の域』
素晴らしいですわ。

べた褒めですわ。

まぁ……
お姉様も、一話目を見てみますか?
見てみますわ。


視聴中ですわ


…………
これは、何が面白いのですか?
このアニメは、面白くないですわ。
……え?
このアニメは、クソほどに面白くないアニメですわ。
面白くないのですか?

では、なぜここまで褒められているのですか?

なぜなら、これは……
クソアニメだからですわ。
なんと……っ!
響きから良くない物な印象を受けますが、クソアニメとはなんですか?
クソアニメとは、アニメ界隈の中で最下位を争う程クオリティの低い、もはや駄作の中の駄作と言われるアニメのことですわ。
そうなのですか。

それが、どうして人気を集めているのですか?

それは、現在調査中ですわ。
では、私も調査をお手伝いしますわ。
ちなみに、このアニメの星は4.7ですわ。

満点は5ですわ。

レビューも、褒めているものが多いですわね。
なぜ、ここまで酷いクオリティなのに褒めるのでしょう。
不思議ですわ。
では、ニーコがこのアニメを見た時、どのような感想を抱きましたか?
そうですわね。

ここまで面白くない物は初めて見たと思いましたわ。

そうですわよね、私も非常に面白くないと感じましたわ。
では、ニーコはこのアニメを見るのをやめましたか?
いえ、やめませんでしたわ。
それは、なぜですか?
それは、そうですわね……。
元気を、もらえた気がしたのですわ。
元気、ですか?
これだけ面白くないアニメでも、世に出ることが可能なのだと思いましたわ。
そして、このアニメで世に出ることが可能なのであれば、私も世の中に居ていいのだと思いましたわ。
それですわ!
これですか?
皆、底辺になるのは嫌ですわ。

そのため、生きていく上でいつ自分が底辺になるのか不安で仕方が無いのですわ。

その中で、このアニメは世の中の底辺を担ってくれますわ。

だから、私達は安心して生活することが出来るのですわ。

なるほど! ですわ。

だから、この感想欄はつまらないことに感謝する感想が多いのですわね。

最下位、それは恥ではなく皆を支える立派な役目ですわ。
これは、大きな発見ですわ。

本部に報告しましょう。

『底辺を担ってくれる存在があるため、今日も私達は元気です』、本部とレビューに送信ですわ。
では、私もこのアニメを見ますわ。

私も元気が欲しいですわ。

ぜひ、おすすめしますわ。


ブーッ


本部から返信が来ましたわ。
なんと書かれていましたか?
『私達も、あなた方に支えられていますよ。』


 

【背景画像】

ホテルの一室:ぽんこ様(illustAC様より)

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登場人物紹介

イーコと申しますわ。

感情を勉強中ですわ。

高級な装飾品を身につけた時の優越感を知りたいですわ。

「もういい、お前は帰れ」と言われたため、本当に帰ったら怒られましたわ。

よろしくお願いしますわ。

ニーコと申しますわ。

感情を勉強中ですわ。

なぜ徹夜を自慢するのか、その原因を知りたいですわ。

「そこに立ってろ」と言われたため、一日中直立していたら怒られましたわ。

よろしくお願いしますわ。

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