第11話 失敗の後ろに隠れていたのは、想いの結晶でした

文字数 1,331文字

姉様、出来ましたわ。
ニーコ、ありがとうですわ。

まさか、ニーコが夕ご飯を作ってくれるとは思いませんでしたわ。

私だって、やる時はやりますわ。
では、持ってきますわ。
わくわく、ですわ。
……。
では、いただきましょう。
……ニーコ、その、これは何ですか?
ハンバーグになるはずだった物ですわ。
ハンバーグではないのですね。
恐らく、もうハンバーグではないですわ。
そうなのですか、では一体なんなのでしょう……。
とりあえず、食べてみますわ。
パクッ
…………。
……苦味と酸味の戦争で、巻き添えを食らった気分ですわ。
自分でも惚れ惚れするぐらい、不味いですわ。
ニーコ、これは、えっと……
単刀直入に言いますわ。
失敗しましたわ。
でしょうね。
しかしお姉様、この失敗は無意味ではないですわ。
どういうことですか?
失敗料理とは、非常に反応に困る物ですわ。

この先、失敗料理が出てきたら、その時の対応に困りますわ。

確かに、現時点で非常に困っていますわ。
そのため、この料理で対応を練習しましょう。
なるほど、そのための失敗料理だったのですね。
もちろんですわ。
では、私はニーコになんと声をかければいいでしょう。
お姉様の言葉、待っていますわ。
そうですわね……。
…………
クソ不味いですわ、殺す気ですか?
血も涙もない感想ですわね。
正直な感想ですわ。
その言葉が正直ということが、私は怖いですわ。
では、私は何を言えばいいのですか?

褒めて欲しいですわ。

どこか褒める所はありませんか?
無いですわ。

ただただ、不味いですわ。

真っすぐ過ぎて、辛いですわ。
お姉様、このままですと私は泣きますわよ。
それは、少々困りますわ。
……わかりました、以前教えてもらった嘘という技法を使いますわ。

えー、コホン。

この料理は、ビックリするぐらい美味しいですわ。
いえ、不味い物は不味いですわ。
もう、私はどうすればいいのですか。
……わかりました、聞き方を変えますわ。

ニーコは、なんと言って欲しいのですか?

そうですわね。

忘れて欲しくないことが一つありますわ。

私は、この料理を頑張って作ったこと、ですわ。
…………
確かに、この料理は失敗しましたわ。

美味しくないかもしれませんわ。

でも、この料理の中には、お姉様への想いがありますわ。
それだけは伝わって欲しいですわ。
…………
パクッ
ニーコ……
作ってくれて、嬉しかったですわ。

ありがとうですわ。

今度は一緒に、お料理を作りましょ。
お姉様……。
目の前の失敗に縛られず、その背景を見れば自然と言葉は出てくるものですね。
この胸の温かさを、写真と一緒に本部に報告しますわ。

『失敗の後ろに隠れていたのは、想いの結晶でした。』

これは、本部も胸を打たれることでしょう。

あ、本部は……
ブーッ
早速、返信が来ましたわ。
『多分、それはふざけてますよ。過去に三度ほど、ふざけて適当な物を作っていましたので。』
余計なことを……
……
ふざけていたのですか?
いいえ、ふざけていないですわ。
…………
……多少、探求心と好奇心が表れたのは、事実ですが。
……そうですか。
腹減ったから、さっさとカップ麺でも買ってきてください。
……なんなりと。


 

【背景画像】

夜のホテルの一室:ぽんこ様(illustAC様より)


【挿入画像】

失敗した料理:ぽふっ様(illustAC様より)

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登場人物紹介

イーコと申しますわ。

感情を勉強中ですわ。

高級な装飾品を身につけた時の優越感を知りたいですわ。

「もういい、お前は帰れ」と言われたため、本当に帰ったら怒られましたわ。

よろしくお願いしますわ。

ニーコと申しますわ。

感情を勉強中ですわ。

なぜ徹夜を自慢するのか、その原因を知りたいですわ。

「そこに立ってろ」と言われたため、一日中直立していたら怒られましたわ。

よろしくお願いしますわ。

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