第39話 高みに登って得られるエネルギー、あなたは魅了されますか、恐怖しますか

文字数 1,364文字

たかーい!!
高い……。
普段見ている物がこんなに小さく、澄み渡る空がこんなに近く、あぁ私は神になったのでしょうか……
高いのは、素晴らしいですっ!!
たしかに、凄いです……
なぜ、高いのは素晴らしいのか、今日はこれを考えましょう!!
……嫌。
考えましょうっ!!
嫌です。
…………。
え?
嫌なんです。
なんでぇ?
一度、下に下りて考えるのであれば大賛成ですよ。
嫌ですよ。

だって、こんなにも素晴らしい景色が広がっているのですからっ!!

…………。
その景色が怖いんですよぉぉぉぉおおおお!!!!
死んじゃうよぉぉぉぉおおおお!!!!
ありゃ。
なぜ同じ景色を見ているのに、これだけ感じ方が違うのでしょうか。
今日は、その違いを考えましょうか。
下ろしてぇぇぇ……。
まず、この小さくなった街並みを見て、何を感じますか。

私は、新たな発見を感じました。

普段過ごしていた街は、遠くから見るとこのようになっていたのですか。あのホテルが私達の過ごしているホテルなのですか。あの真っすぐ進んでいた道は実はあそこまで曲がっていたのですか。

このように、普段感じることの出来ない新たな気づきを感じましたわ。

とても、とてつもなく面白いですわ。

ニーコは、何を感じましたか?
……死。
……あれ。
では次に、この視界いっぱいに広がる空を見て、何を感じますか。

私は、心の広がりを感じましたわ。

普段、全く気にも留めずにビルの隙間から覗いていただけの空が、あぁなんて広いのかと感激してしまいましたわ。普段閉じてしまっていた心がこの空一つでオープンになった気がしますわ。

ニーコは、何を感じましたか?
……天国。
わお。
では、このビルの上で感じる風に、何を感じますか。

私は、苦痛が過ぎ去る瞬間を感じましたわ。

日頃感じる悩み、苦しみ、そんな私の中に渦巻くどす黒い何かを、この風がどこかへ運んで行ってくれるのを感じましたわ。きっとこの風はみんなの元に届いて、みんなの苦しみを洗い流してくれるのですわ。

ニーコは、何を感じましたか?
……この風が苦痛。
……ぬぇ。
なぜ、こうも感動と恐怖が入り混じってしまうのでしょうか。

高い所というのは、得体の知れないエネルギーを秘めていますわね。

……そうですわ。

高い所はエネルギーを秘めているのですわ。

それはそれはとてつもなく凄いエネルギーを秘めているのですわ。

高くなればなるほど、エネルギーが大きくなるのでしょう。

そして、私はそのエネルギーに魅了されてしまったのですね。
一方のニーコは、エネルギーに恐怖を覚えてしまったのでしょう。
うぁぁ……、うぁぁ……。
ほーら、ニーコ。こっちに来てくださーい。
高ーい、高ーい、ですよー。
…………
あばばばうぇbヴぁpばヴぁpべwpヴぁうwべヴぃあんヴぁえbりヴぁばいwヴぁうぇヴぁうぇいヴぁうぇいvばうぇおいうbヴぁうぇいうヴぁいえうvb
きゅぅぅん……
あちゃ、やっぱり駄目でした。
とりあえず、本部に報告しましょう。

『高みに登って得られるエネルギー、あなたは魅了されますか、恐怖しますか』、ニーコの気絶写真も添付して送付しましょう。

あぁ、心地よい風ですわ。
ブーッ
本部から連絡が来ました。
『あの、そんなことより、ニーコが可哀そうなのですが……』
……ごめんなさーい。


 

【背景画像】

ビルの屋上から見下ろした街なみ:kushi_70D様(illustAC様より)

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登場人物紹介

イーコと申しますわ。

感情を勉強中ですわ。

高級な装飾品を身につけた時の優越感を知りたいですわ。

「もういい、お前は帰れ」と言われたため、本当に帰ったら怒られましたわ。

よろしくお願いしますわ。

ニーコと申しますわ。

感情を勉強中ですわ。

なぜ徹夜を自慢するのか、その原因を知りたいですわ。

「そこに立ってろ」と言われたため、一日中直立していたら怒られましたわ。

よろしくお願いしますわ。

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