第43話 喜怒哀楽ではなく、喜無怒無哀無楽無でした

文字数 1,167文字

それでは、反省してそろそろ本気で感情について考えましょう。
そうですわね。まだ星に帰りたくないですもの。
では、感情にはどのような物があるでしょうか。
感情には、喜怒哀楽がありますわ。
喜怒哀楽、私も聞いたことがありますわ。喜怒哀楽は、「喜び」、「怒り」、「悲しみ」、「楽しみ」といった基本的な感情を表す言葉ですわ。
そうですわね。感情の基本ですわ。
では、「喜び」とはなんでしょう。
物事が良い結果を迎えた時、自身の気持ちが高揚することを指しますわ。
「怒り」とは。
物事が自身の想い通りに進まず、苛立ちを感じることですわ。
「悲しみ」とは。
自身の望まない結果となってしまい、落胆して涙を流すことですわ。
「楽しみ」とは。
自身の中で充足した時が流れることですわ。
では、「喜び」を表現してください。
喜ーーーっ!!!
「怒り」を表現してください。
怒ぉぉぉおおお!?!?!?
「悲しみ」を表現してください。
哀ぃぃぃ……

「楽しみ」を表現してください。

楽っ♪
では、これを本部に送信しましょう。
今回は、真面目に頑張りましたわ。
ブーッ
本部から返信が来ましたわ。
『え、今さら喜怒哀楽の話ですか……』
…………
怒ぉぉぉおおお!?!?!?
怒ぉぉぉおおお!?!?!?


 

なーんか、やる気が無くなりましたわ。
頑張ったのに報われないと、やる気が無くなりますわね。
なーんにも感じませんわ。
ある意味、感情が落ち着いていますわ。
これは、喜怒哀楽の中で、何に当たるのでしょうか。
……、どれでもありませんね。
喜びも、怒りも、悲しみも、楽しみも感じませんわ。
……『無』ではないですか?
そうですわね。これは、『無』ですわね。
むむむぅ……。
ニーコ、気づきましたわ。
どうされました?
先ほど、私達は怒りの感情を顕わにしたではありませんか。
そうですわね。怒ぉぉぉでしたわ。
私達は、その怒の後に無になりましたわ。
無になりましたわ。何も感じませんわ。
すなわち、喜怒哀楽の合間には、無が挟まっているのではないでしょうか。
ほぅ。すなわち、全ての感情の後には、一度『無』が訪れるということですか?
そうですわ。『喜び』を感じていると、自然と『無』になりますわ。ずっと『怒り』を感じることは出来ず、気が付いたら『無』になりますわ。『悲しみ』もいつか『無』になりますわ。『楽しさ』も『無』に変わっていきますわ。
『喜無怒無哀無楽無』ということですわね。
喜無怒無哀無楽無は、素晴らしい表現ですわね。これで、本部に報告しましょう。
そうですわね。リベンジですわ。
『喜怒哀楽ではなく、喜無怒無哀無楽無でした』本部に送信ですわ。
これで、本部も満足でしょう。
ブーッ
本部から連絡ですわ。
『……え?』
これは『疑』ですね。
喜無疑怒無疑哀無疑楽無疑ですわね。
もはや、なんのこっちゃ。


 

【背景画像】

夜のホテルの一室:ぽんこ様(illustAC様より)

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登場人物紹介

イーコと申しますわ。

感情を勉強中ですわ。

高級な装飾品を身につけた時の優越感を知りたいですわ。

「もういい、お前は帰れ」と言われたため、本当に帰ったら怒られましたわ。

よろしくお願いしますわ。

ニーコと申しますわ。

感情を勉強中ですわ。

なぜ徹夜を自慢するのか、その原因を知りたいですわ。

「そこに立ってろ」と言われたため、一日中直立していたら怒られましたわ。

よろしくお願いしますわ。

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