第23話 深層心理に潜り込んだら、オムライスを見つけました
文字数 1,621文字
『深層心理に潜り込んで、やる気を探してみせます』、本部に送信ですわ。
お姉様、いつの間に本部へ報告していたのですね。
本部がやる気を出せとうるさいので、黙らせてやりましたわ。
黙らせてやりましたわ。
それにしても、深層心理に潜りこむとは、どういうことですか？
深層心理とは、心の奥深くにいる自分でも気づかない心のことですわ。
その心の奥深くを探せば、ひょっとしたらやる気があるかもしれませんわ。
そのようなこと、可能なのですか？
先ほど、瞑想の動画を見たから大丈夫ですわ。
お姉様、それは動画を試してみたくなっただけではないのですか？
そうですわ。
そうなのですか、本部への報告は関係ないやないかーい、ですわ。
ですが、私もその深層心理には興味がありますわ。
ぜひ、深層心理の中へ行ってみたいですわ。
そう言ってくれて、嬉しいですわ。
深層心理の旅へ行ってみましょう。そこに寝転がってください。
寝転がりましたわ。
では、早速始めましょう。
目を閉じてくださいな。
閉じましたわ。
では、まずはゆっくり深呼吸しましょう。
すー、はー。
鼻からゆっくりと息を吸って、口からゆっくりと吐いてください。
すー、はー。
全身の力が抜けていくのを感じてください。
すー、はー。
頭から、首、お腹、つま先、少しずつ力が抜けていくのを感じてください。
すー、はー。
体に、心地よい重力がのしかかってくるのを感じます。
すー、はー。
あなたは、心地よくなって、体が少しずつポカポカしてきます。
すー、はー。
どんどん、どんどん、ポカポカしてきます。
いつの間にか、あなたはそのポカポカで、動き出したくなってきます。
すー、はー。
いつの間にか、あなたは動き出したく、働きたくなっていますわ。
なっていませんわ。
失敗ですわ。
たしかに、リラックスは出来ましたわ。
しかし、仕事のやる気が出ませんわ。
確かに、そうですわ。
深層心理に、やる気はいなかったのですわね。
いえ、仕事のやる気がいないだけで、何かしらのやる気はあると思いますわ。
そうですわね。
では、そちらを呼びかけてみましょう。
どんどん、どんどん、ポカポカしてきます。
いつの間にか、あなたはそのポカポカで、動き出したくなってきます。
すー、はー。
いつの間にか、あなたは動き出したく、ゲームをやりたくなっていますわ。
やる気が出てきましたわ！
うぉぉおおお！！！
それは元々ではないのですか？
はいっ！
意味ねー。
ニーコ、これでは全く意味が無いですわ。
確かに、深層に潜り込む必要が無いですわ。
……わかりましたわ。
私が何かのやる気を引き出すのはやめますわ。
やめてしまうのですか？
その代わり、ニーコに深層心理の中で、何かを探してもらいますわ。
その中で見つけた物を教えてください。
出来るかどうかわかりませんが、やってみますわ。
あなたは、無意識の中で揺蕩っていますわ。
あなたは、温かい靄の中に漂っていますわ。
その中で、何かがあなたの意識を霞めますわ。
少しずつ、少しずつですが、その意識がはっきりしていますわ。
だんだん、だんだん……
……見えましたわ。
見えたのですか？
あ、あれは……
オムライスですわっ！！
…………
……はい？
……オムライスでしたわ。
間違えなく、オムライスが見えましたわ。
……それは、ただの空腹ですね。
ですが、深層心理で食べたいものがわかりましたね。
そうですわね。
深層心理が無ければ、オムライスに辿り着くことは出来ませんでしたわ。
それは、紛れもない成果ですわ。
では、夕食はオムライスにしましょう。
やったー、ですわ。
『深層心理に潜り込んだら、オムライスを見つけました』、送信ですわ。
やる気は見つかりませんでしたが、オムライスを見つけたので、本部も良しとしてくれるでしょう。
ブーッ
本部から返信が来ましたわ。
『はい？』
……
はい？
【背景画像】
夜のホテルの一室：ぽんこ様（illustAC様より）
光エフェクト：ぷにはむ様（illustAC様より）
【挿入画像】
オムライス：ゆろっく様（illustAC様より）
