第24話 巡り巡る優しさをせき止めます、そうして皆の仕事を軽減します
文字数 1,651文字
なさけを～、かけて～、さんぜんり～。
お姉様、どうされたのですか。
ことわざ、情けは人の為ならず、の歌ですわ。
聞いたことのある、言葉ですわ。
これは、日本の有名なことわざですわ。
人に情けをかけるのは人の為にならないという意味でしょうか。
ニーコ、それは間違いですわ。
よくある間違いですわ。
情けない人は社会の為にならないため、消えてしまえということでしょうか。
間違いなく、間違いですわ。
珍しい間違いですわ。
もう、頭を使い過ぎて考えることが出来ませんわ。
答えを教えてください。
情けは人の為ならず、
これは人に良いことをすると巡り巡って自分に帰って来る、
という意味ですわ。
良いことをすれば自分に利益があるということですわね。
これで、良いことをする理由になりますわ。
そして先ほど、私がコンビニで卵を落として割って号泣していた時、店員さんが許してくれましたわ。
お姉様、私が部屋でゲームに負けてブちぎれていた時、そんなことをしていたのですね。
店員さんは、私の為に良いことをしてくれましたわ。
今、情けが巡り始めているのですわ。
なるほど、店員さんの親切が巡っているのですね。
しかし、私は何もしていませんわ。
はぁ。
私は、情けをせき止めていますわっ！
私のせいで、情けは止まっていますわっ！
へぇ。
ニーコ、私は何かした方がいいのでしょうか。
人の情けなんて、どうでもいいじゃないですか。
ゲームをしましょうよ。
たしかに、気にし過ぎですわね。
それにしても、どうして情けは巡るのでしょうか。
それは、あれですわよ。
人が情けをかけるから優しい気持ちになって、それが情けをかけることになって、結局はみんな情けなくて……
ゲームしましょうよ。
そんなにゲームがしたいのですね。
今、イベント中なんですわ。
この答えが出たら本部への報告も済むため、存分にゲームが出来ますわよ。
っ！！
…………
情けをかけられる、つまり誰かに良いことをされると、自身も何か返さなければいけないという気持ちになりますわ。これは、返却性の法則という物らしいですわ。
しかし、良いことをした相手が一度しか会わない相手の場合、良いことをされたのにその優しさを返すことができませんわ。そのため、優しさを返したいという気持ちだけが溜まりますわ。
そのため、その優しさを返したいという気持ちを別の人にぶつけるのですわ。そうすることによって自身の優しさを返したいという気持ちを収めるのですわ。
では、その気持ちをぶつけた相手はどうなるでしょう。やはり優しさを返したいという気持ちが募り、また別の人にぶつけますわ。
それを繰り返していたら、いつかは最初の人に戻ってくるのではないですか？ それが、情けは人の為ならず、の実態なのではないでしょうか。
さ、ゲームしましょう。
ふぉぉ……。
凄いですわ、ニーコの覚醒ですわ。
ではやはり、私も優しさを返すべきなのでしょうか。
返す必要なんてないですわ。
お姉様が優しさをぶつけたら、その相手はまた別の人に優しさを返さなければいけないのですよ？ そんなの、相手の仕事を増やす行為に過ぎませんわ。
優しさを返して満足して、相手の仕事を増やして、そんなの自己満足と迷惑行為のコンボアタックではないですか。それこそ、情けない社会の為にならない人間ですわ。消えてしまえですわ。
むしろ、優しさを返さないお姉様は素晴らしいですわ。
なぜなら、この負の連鎖を断ち切っているのですもの。
たしかに、そうですわね。
『巡り巡る優しさをせき止めます、そうして皆の仕事を軽減します。』、本部へ送信ですわ。
では、何もしないという行為こそが、優しさなのですね。
そうですわ。
今のお姉様こそ、優しいのですわ。
……またドロップしなかった、クソが。
ブーッ
本部から連絡ですわ。
『そのような考えもありますね。ちなみに、何もしていないことへの言い訳、ではないですよね？』
……どうですか？
あー、うるさいうるさい。
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ホテルの一室：ぽんこ様（illustAC様より）
【その他画像】
スマートフォンのイラスト（斜め）：ツカッテ様
