第63話 運命を持たない人

文字数 318文字

 まわりからの影響、まわりから己が受けた影響。
 それを大抵の人が、自分の運命、という。

 このひとと出逢ったのも、この事故にあったのも、こんな幸せになったのも、こんな不運に見舞われたのも、自分の運命だったのだと。
 殊に、それに抗う気力、体力の消耗を切に感じる季節にいる人間には、そんな思念が大きく彼を覆うことになるだろう。つまり、晩年である。
 若年から、壮年から、それを感じる人間もあるだろう。

 だが、運命を持たない人間もある。確かにあるのだ。
 まわりからの影響をいっさい受けない、受けたとしても、それはそれだけである、とする人間が。
 他人は他人、自分は自分、と、ほんとうに思っている人間が!

 諦念、そこへ行くことには変わらないとしても。
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