第18話 不謹慎

文字数 856文字

 昨夜、YouTubeで、あるユーチューバーが「不謹慎」なことばかり言っていた。つまり、一昨日、日本中を動揺させたといわれる奈良で起きたれいの事件を、じつに楽しそうにパロディッていたのだ。
 ライブ放送で、スパチャも飛んでくる。横にはチャットのコメントが適度なスピードで流れ、そのコメントをよく取り上げて読む演者が、ほんとに楽しそうだった。

「ぶっちゃけ、天罰だと思った」「必殺仕事人が現れたと思った」「不謹慎だけど、〇×△□…」みたいなコメントを、その演者はみごとな発想で飛翔させてコメディー化し、見ていたこちらも思わず笑えてきてしまった。
「まあ、一日平均四千人か死んでる日本人の一人が死んだだけなんですけどね」とか、「オレも嫌いでしたよ、あの人。まあ、ふさわしい最期だったんじゃないでしょうかね」とか、すごいことも言っていて、マイッタ。
 まさに不謹慎だけど、面白かった。たぶんあの演者は、そんな悪いことを言っていない。むしろホントのことを言っているだけのようにも思えた。

 その演者のライブ放送は、アーカイブとしてYouTubeでいつでも視聴できるのだが、昨日の放送は「これは残せません」。
 ちょっと早すぎましたかね、この放送、まぁでも、みんなで泣くより、笑ってお見送りしたほうがいいんじゃないですかね、とも言う。(しかも綺麗に、何の悪気も悪意もなく、ピュアに言うのだった。目もきれいだった)正直な人だなあと、と関心して見ていた。

 とにかく笑って楽しそうに演じていたところが、不謹慎だけど(ぼくが)、よかった。
 何か、気が軽くなった。見ていて、気が、晴れたのだ。

 笑ってもいいのではないか、と思った。

 かれは、「三島由紀夫が今生きていたら、どうなっていたと思いますか」というリスナーからの質問に、「ホリエモンとかひろゆきとか、あんな感じになってたんじゃないですかねえ」とか言っていた。
 そうか…。ありうる。
 ユーチューバーか。
 たまに品のないことをするけれど、自分のクズぶりもチャンと自覚している、面白い人だった。
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