第23話

文字数 714文字

卒業式の予行練習の日に東日本大震災が起きた。
6年生は皆体育館に集合していて、体育館がぐらついたときは少しざわついただけだったし先生も
「収まるまでちょっと待って~」
なんて言っていたし 全然大したことないんだろうなと思っていた。
皆地震久々だねなんて言って笑っていたような気がしてたし、私もすぐに収まるものだと思っていた。
予想は大外れで、揺れが激しくなってくるにつれて悲鳴を上げる女の子や驚いて大声を上げる男の子なんかもいて、いつも威厳のある学年主任はどうしていいのかわかりませんといった感じだった。
「椅子の下にはいれーーーーーーー!!!」
その場にいた唯一の男の先生が叫んだ瞬間皆一斉に椅子の下に頭を隠した。
頭を隠しながら少し上を見ると、照明が落ちるんじゃないかと思うくらいグラグラとブランコのように揺れていた。
(ここで皆潰れちゃうのかな)
なんて思ったくらいで、揺れが収まるにつれて122人全員が話しているわけではないが、みんなの話声が大きくなる、ざわつき始める。動揺が広がっていた。
「走れーーーーーーーーーーー!!!!」
男の先生がまた叫んだ、瞬間に皆一斉に外に向かって蜘蛛の子を散らすように走り始めた。
例にもれず私も走った、途中で右往左往していた藤の手を無意識につかんで走った。
照明が落ちてくるかも、また地震が来て窓ガラスが割れるかも、建物にひびが入っていたら崩れて私たちは潰れるのかもとか色々考えていた。
運動ができることが取り柄だったのがその日初めて生かされた気がする、誰よりも早く外に出れた。
藤がなんであの状況で右往左往していたかというと人探しをしていたらしい、探し人がいきなり来て手を引っ張るとは思ってなかったようだったけど。
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