第54話

文字数 502文字

久しぶりにお寿司を食べることになった。
「1人2000円までだぞ。」
の一言に食べ盛り育ちざかりの中学生は大歓喜だった。
私は外食というものは福地先生に連れられて行くのが初めての経験で、お店に入るときはわくわくしたし、とても興奮した。
皆最初は勢いよく注文をしていくのだが、途中でペースが落ちていく。
「りりさん、俺の分食べますか?」「りりさん食べきれない…」
「食べる~!」
食べきれなかった分は私の胃の中に綺麗に収まっていくのが部活での日常だった。
外食なんてめったにしないのと、家ではご飯が食べられない私はこの機会を逃すわけにいかなかったのだ。
「りりこ~吐くなよ~」
「大丈夫です!胃袋だけは強いし大きいので!」
「りりさんはいっぱい食べますよねぇ~」
「まぁね~食べるのが趣味だから。」
皆には家庭の事情は言っていないし、気にしてほしくもなかったから黙っていた、はたから見れば 学校をさぼるくせに楽しい行事には参加する奴に思えていたと思う。
別にどう見られてもどうでもよく思えてきていたのもあるが、家庭環境を餌にして同情を買うなんてことはしたくなかったし、皆と対等と言えば聞こえがいいが、友達として認識してほしかったのだ。
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