第47話

文字数 1,585文字

隣町に着いてからは、外の空気を吸えたことに歓喜した。
バスの中は閉鎖的で、息が苦しくて吐き気がした。
ご飯を食べることになって、チェーン店のファミリーレストランで食事をすることにした。
中学生がファミレスに行くのは止められていたが、土地が違ってしまえばどうってことないと思っていたし、そもそも2人が気にしないタイプだったのもあって、案内された席に行けばお腹が空いたと急いで注文をした。
注文した商品がとどくまで、病院への行き方と、お土産に何を持っていくかでとても迷った。
当時、藤の好きだったキャラもののアイテムがあるかもしれないということで、食べ終わったらアニメグッツのショップに行って購入した。
駅から病院行きのバスに乗り込んだ、バスの中はおじいさんとおばあさんで溢れている

病院内に入れば、「~~さん今日見てないわね。」「大丈夫かしら。」なんて声が聞こえてくる。
病院に行くことで交流をするご老人が居て、生存確認をしているんだろうなと感じた。

受付の方に藤の病室を訪ねると、2棟(別館)らしかったので、明日香ちゃんと向かった。
病室前までいけば、藤のお母さんがいた。
「りりこちゃん、明日香ちゃん、遠いのに来てくれてありがとうね!藤、中にいるから。」
「こんにちは~ありがとうございます、お騒がせします。」
「失礼します~。」
入れば藤が軽く手を振っている。
術後でだいぶ疲弊しているだろうに笑顔を見せてくれたのが嬉しかった。
「おつかれさま!元気してた~?」
「お土産買ってきたよ!」
「ありがと。」
「藤ね、一昨日手術が終わったんだけど、昨日なんか声の出し方忘れたとかで声出なかったのよ、今日2人が来てくれるからって声出せるように頑張ったみたい!椅子、これ使ってね。」
「ありがとうございます。」
藤のお母さんにお土産を渡す。
「いいのにぃ~、ありがとうね、お菓子食べて。疲れたでしょ~。」
藤のお母さんはお菓子と飲み物を準備してくれた。
「嬉しいです!いただきます。」
「いただきます。」
それからはたわいもない話を藤に聞かせていた感じになった、藤はちゃんと登校しているが、私と明日香ちゃんは学校には行っていないことが服と髪色からはわかるだろうに、藤のお母さんとお父さんは私たちを毛嫌いせずに受け入れてくれて嬉しかった。藤は声は出なくても笑ってくれて、とても安心したのを覚えている。
途中で藤のお父さん、おばあさん、おじいさんが来て挨拶をしたが、それぞれが思うように良いようにとってくれていたように、悪意を感じることは全くなくて、藤の優しさと自由さはここから来ているのかななんて考えたりもした、私は私の思う普通の家族に思いをはせていて、ずるいとねたんでいた時期だったはずなのに、藤にはそういった感情を持たないのは単純に藤が人間として好きだったのかもしれないと、今更考えている。
心臓の手術なんて一生に1回でも経験する方がレアだと思っていたから、内心実は悪い意味でドキドキしていた。
中学2年生の子供な私たちなりに、精一杯は気を使ったつもりだった。
騒がないように盛り上げる、藤の傷口は開かないかとか、色々考えていたつもりだ。
「じゃあ、そろそろ帰るよ!」
「そうだねぇ、帰ろうか。」
2時間も滞在していた、家族の時間もあるだろう、帰ろうということになった。
「帰るの?おじいちゃん達もそろそろ帰ると思うから一緒に乗って帰ったら?送ってくれるよ?」
「いえ、ちょっと来たついでに見たいところもありますし、お気遣いありがとうございます。」
この後は明日香ちゃんとふらふらしようと決めていたし、迷惑に迷惑を重ねるわけにはいかないと思った。
「そう?気を付けて帰るんだよ。」
「はい、ありがとうございます、お騒がせしました。」
「じゃあ、藤ちゃん帰るね~」
「藤~お大事にしてね、またね!」
また軽く笑いながら緩く手を振ってくれたことで、安心した。
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