第56話

文字数 1,195文字

[りりこおはよ~!元気?文化祭見るだけでもいいからおいで!帰りは送ってあげられないけど朝は迎えに行くから!今日の夕方家に行くね。]
朝というより昼におはようと送ってくるんだから先生も私がこの時間に起きて活動し始めることわかってるんだなぁなんて考えながらプレハブのエアコンをつける。
とりあえず朝の仕度をしないといけない歯磨きしに母屋に向かう。
入りたくない近づきたくない母屋に嫌でも入らなきゃいけないこの時間は憂鬱だ。
猫が足元でにゃーにゃーと鳴いているが私には何をすることもできない。
祖母は八つ当たりをするなら自分より弱いものにと決めているんだろうか、猫まで叩く、というか殴る。
私の目の前で猫が殴られていれば私が介入して怒鳴りつけることはできるけど延々と見ているわけにもいかない、私が居ない間の猫のことを考えると胸が痛くなる。
中学生の私には猫の頭をなでることしかできない。

朝の準備を済ませたらパソコンを起動させて音楽をかける。
今日は何をしようか、先生が夕方に来ることを考えたら今出かけるのは良くないだろう、音楽を聴きながら色々考える。
これからどうしていこうか、いつまでこの部屋で生活するのか、祖母との関係、父はどうするつもりなのか、猫はどうなるのか、進路はどうするか、仕事をするのか、自由に生きていくために必要なものはなんなのか、同級生は今何をしているのか、毎日プレハブに居ればそんなことばかり考えて布団にこもりたくなってくる、考えれば考えるほど疲れるし考えたくない。
(なんで私がこんなこと考えなきゃいけないんだろ、同級生は高校に行く事だけ考えてるのかな、私の生活は誰が守ってくれるんだろう。)
どんどんネガティブなイメージしかわかなくなってくる、スーパーでお菓子でも買ってこようと手軽な服に着替える。
(明日香ちゃんは通信制の高校に行くって言ってたなぁ。)
外に出れば明るく、涼しくなってきた時期ではあるけど動くと汗ばむ。
明日香ちゃんのお母さんは明日香ちゃんにちゃんと高校を卒業してほしいらしく、週に一度お母さんとお出かけをする日があるらしいのだが、移動中、話す度に高校に行ってと説得されるのが嫌だと愚痴をこぼしていた。
(明日香ちゃんは心配してくれる人がいるんだなぁ。)
別に心配されたいわけじゃないはずなのに、私は他人に何を求めているのか、自分が何をしたいのかが全く分からなくてどうしていいのかわからなかった。
スーパーの中は涼しく、汗ばんだ体を冷やしてくれる。
せんべいとクッキーとアイスがあれば今日1日過ごせるだろうと買い物かごに入れていく。
レジに持っていけば慣れた手つきで店員さんがお会計をしてくれる、中学生がこの時間にふらふらしていようが業務に支障が出なければ通報することもないんだろう、このスーパーにはいつもお世話になっているし、ぜひ通報しないでほしいと思いながらアイスを食べながら帰路につく。
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