第26話

文字数 1,063文字

食料確保が済み、どういう状況なのかとニュースを見ていた時に 父と一緒に作業していた人の奥さんから電話がかかってきたそうだ。
「逃げて!原発が爆発したの!!急いで逃げて!」
原子力発電所が爆発した、父はその時チェルノブイリを想像したらしい、父に限らずその場所にいた人たちはチェルノブイリを想像した人は多かったと思うけど。
「娘を学校に向かえに行ったときにちょうど地震がきて、津波で家の方は壊滅みたい、今東京のおじいちゃんの家にいるから私は大丈夫だから、おねがいだからあなたも逃げて来てお願い。」
「皆無事に逃げれてよかった。俺は大丈夫だから心配しないでくれ。」
なんてやり取りがあったそうだ。

その後は社長からの指示で父は帰宅、一緒に仕事をしていた人も奥さんと娘さんが待つ東京に一時的に非難したそうだ。
いわきの人達は原発が爆発したということで、作業員を募集しているのをみて、俺が行かなきゃいけないだろうと言う人もいて、いつも強気な奥さんが泣いて「行かないで。」と頼む姿もおおくあったそうだ。

父からいわきで起きていた事を一通り聞き終わったころ。
ガソリンを入れに行こうと車を出したけど、どこのガソリンスタンドも長い列ができていた。
とてもガソリンを入れられる状態ではなかった。
「明日、新潟に石油を買いに行こうと思うんだ、俺はいわきにお世話になったから少しでも手伝えることがあるなら喜んでやるつもりだ。」
次の日、私も一緒についていく事にした、道中。
「中学の入学式には行けそうにない、片付けや困っている人がいるだろうから、今助けなきゃいけない。」
「いいよ、入学式なんてどうでもいいし、行ってらっしゃい。」
入学式がどうでもいいのは事実だった、別に親が居なくても勝手に式なんて進むと思っていたし、なにより父は阪神淡路大震災の時に助けに行きたかったのに助けに行けなかったのだ、こういう時に動きたい人だろうとも思ったし、心配だったが私が止める権利もないのだ。
「その代わりじゃないけど、原発だけには行かないでね。」
ニュースで放射線の事情をやっていたのを見て、震えたのだ。
「わかった。」
行かないことだけ約束してくれればなんでもよかった、父は強いから何があっても生きて帰っては来るだろうと思っていたし、悔いがないようにしてほしかった。
新潟では、ホームセンターで【お一家族人ケースのみ】と表示されていたが、いわきに持っていく事を説明するとアルバイトの人が店長に確認しますと段取ってくれて、2ケース確保することができた。
人間は皆悪い人ばかりではないなと子供心に思った。
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