第11話

文字数 1,040文字

「お前の母さんは相当な寂しがり屋だった。」
寂しいだろう、そんな生活をしていれば。
20歳になったばかりの女の子が客観的に物事を冷静に見れるとは思えなかった、旦那は仕事で忙しく、家に帰ってくるとシャワーを浴びて寝てしまうし、娘は言うことを聞かない、0歳から1歳の子どもが人間ではなく獣に見えたこともあったのかもしれない。私は子供を産んだことがないから想像しかできないけど。面倒を見て家で待っている生活は苦痛だったと思う。
だから育児放棄をするのが正しいとは言わないが、母には母の人生があり、今まで生きてきた人生観や理想の家族像があったんだと思う。
旅館を経営している家だということは、なかなか子供にかまっている暇はなかったんじゃないかとか、物を預けることで母の両親は罪悪感や寂しさを紛らわせていたんだろうか、とか考えると胸が苦しくなる、お互いが干渉したくても干渉で気に状態だったんじゃないだろうか。
こんなのは私の想像でしかないから本当のところはわからない、希望に近いかもしれない。

(求めていた暖かい家族と現状のギャップから逃げるために遊び歩いていたんじゃないか
と、22歳の娘は父から昔聞いたお話しだけで勝手に想像してるんだけどどうなんだろう。)

そんな状況で、私が産まれて1年目の母の口癖になったらしい言葉は「離婚しよう。」だったそうで。
父は最初、離婚しないつもりでいたらしいが、3カ月間疲れて帰ってきて、娘を迎えに行って、離婚しようと言われる生活に限界がきたんだろう。だれでも仏の心なんて持ってないのだ。
しつこすぎるのは良くない。
ついに父の逆鱗に触れたらしく、次の日には本当に離婚届を2枚持って帰ってきた父に母は動揺したらしい。
父曰くそこからは簡単だったそうだ、「離婚したいなんて嘘だ」と泣いていう母に父は「いいから書け」と無理やり机に座らせて記入させたそうだ。
間違えちゃった等のやり取りもあったそうだが、「心配ない、もう1枚ある。」ともう1枚用紙を出したときはあきらめて記入をしたらしい。
その後親権は父に行くことになり、母はアパートから実家に帰ることになった。
父は仕事が忙しいから面倒を見きれないということで、親権は父だが私は父の母と祖母、私にとっての曾祖母と祖母がる実家に預けられることになったのだ。
私は母の記憶がないから父の先入観の混ざった情報の母しか知らないし、本当のところどうなのかは知らないが、私から見た母は相当寂しがり屋だ、だって現状、私も相当なくらいには寂しがり屋だから。
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