第32話

文字数 1,141文字

中学2年生の生活は人生で1番楽だった、何も考えてなかったし考える必要も感じていなかった。
食事は一日一食、コンビニで適当にカップ麺を買うかおにぎりを買えばよかった。
家に居ればその時に流行っていたアメーバピグをするかアニメを見るか、音楽を聴くか、勉強なんて頭の片隅にもなかった。
たまに父がいない隙に事務所になっている部屋に行き、読みたい本を読み漁るのも楽しい。
祖母には殴られず、父に怒声を浴びせられない、とても充実している日々だった。

そんな生活を続けているといい加減にしろと言わんばかりに担任の先生がやってきた。
最初は母屋のドアを叩いていたのに、プレハブが私の部屋だとわかるとわざわざプレハブまでの階段を上がってドアを叩くのだ。
「りりこ~朝だよ、学校の時間だよ~。」
延々と叩くものだからうんざりしてドアを開ける。
「おはようございます、学校は行きません。」
「おはよー!学校さ、給食食べに来るだけでいいよ 給食だけ食べよ?」
何を思って給食だけ食べればいいと思ったんだろうか、不健康な体をしていたような気はしない、一日一食だがやせ細っているわけじゃない。普通より少し軽いくらいだろう。
だけど給食だけ食べればいいというのは魅力的な条件だった。給食費を今納めているのかは知らないが、自分の手持ちから出ていくはずの食費が浮くのだ、そのお金で何ができるか考えただけで胸が躍る。
「わかりました、給食を食べたら帰りますけどいいですか?」
「うんいいよ!給食食べに来ればいいし、学校には私が空き時間に迎えに来るから、連絡とりたいなぁ、何かメールとかない?」
その時やっていたSNSを提示した。
「これならやってます。」
「あぁ!私も好きなアーティストの投稿見るためだけに登録してるから それでやりとりしよう。」
「わかりました。」
SNSのダイレクトメッセージでその日先生が迎えに来る時間が指定されることになった。
「髪の毛茶色いけどいいんですか?学校に行くなら黒くしろって言ってたのはどうしたんですか?」
「まぁ~いいよ、とりあえず着替えて、私次の時間は授業があるから行こうか。」
「わかりました。」
久しぶりに制服を着た、制服だけはかわいい、この地区のどの中学校より可愛いと思う。
「りりこの制服姿久しぶりだねぇ、行こう。」
先生の車に乗り込む。
さっさと学校に向かうものだと思っていた車がコンビニに停車するものだから驚いた。
「朝ご飯食べてないでしょ、買ってくるから待ってて!」
何も言う間もなく買い物に行ってしまって、おにぎりを2つとペットボトルのお茶を買ってきてくれた。
「着くまでに食べちゃって!」
「…ありがとうございます。」
なんでこんなに優しくしてくれるのかと疑問には思ったけど、それ以上に食事を提供されたことが嬉しかった。
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