第25話

文字数 807文字

数時間後に父と電話がつながったと祖母から呼び出された。
父曰く、段取りが良すぎて前日に浜の仕事を引き上げて、違う現場にいたという。
悪運が強いというのか、生きててよかったと思った。
落ち着き次第一旦帰ることになったということで電話は切れた。
1日で父は帰ってきた。
「ただいま。」
「おかえりなさい、生きててよかった。」
父の車の中が会議室だ。そこからは当時の状況を教えてくれた。
地震が起きた瞬間は足場を組んでいたそうだ、(やばい)と思った瞬間にはいつも使っているセカンドバックと携帯を急いで確保し、もう1人一緒に作業していた人と屋根の上に登ったらしい。
揺れが収まると、食料の確保をと急いでコンビニに向かったそうだ。
コンビニは人で溢れていて、各々カゴの中に食料や飲み物を入れていたそうだ。
そういう状況だと人の性格が強く出ると父は言っていた。
自分の食べる分だけカゴに入れる人、家族の分なのかカゴいっぱいにお弁当を詰め込む人、コンビニという小さな箱に人が渋滞している状態で「邪魔だどけろ!!」声を荒げる人、いろんな人種がいると教えてくれた。
電気が止まっている状態で、レジが動かないからと電卓で対応する店員さんに怒りを表す人もいるというんだから、状況の凄まじさは経験のない私には想像しかできないが、皆が生きることに必死だったということだけは理解できた。
店員さんはきっと家族や家の状況、今どういう状態なのか気が気じゃなかっただろうに逃げ出さずにその場で仕事をこなしているんだから優しく接してと思ったが 言葉にするのは、その状態を経験していない私には何も言えなかった。
父は怒声を上げる男に私と同じようなことを考えていたらしく言ったそうだ、
「自分のことで精いっぱいなのもわかるけど、店員さんだって心配なこと色々あるだろうにこらえてここにいてくれてるんだから文句言うな。」
何人かは賛同してくれたようだが、少なからず快く思わない人もいたようだ。
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