第27話 ユーカリの発信器

文字数 928文字

夜になり、今夜は天気がよく満天の星がまたたいている。流星群も見える。
(小声で)シナモン、ちょっといい?

コウジはシナモンに声をかけ、こっそり公民館屋上に連れ出した。

2人で並んで体育座りする。

わぁ、すごいね。星が落ちてきそう。
……シナモン、最近体の調子はどう? 
え?
たまに疲れた顔している。
あ……ユーカリがね、毎晩夢に出てくるの。
詳しく教えて。
ユーカリが夢の中で私を探しているの。隠れても無駄よ、って笑っている。
ユーカリからなにか持たされなかったか? 発信器になるようなものとか。
なんにももらっていないけど……
ちょっとごめん。

コウジは『信号探索アプリ(ヘルツ君)』でシナモンの身体検査を始める。


器用なコウジは運営には内緒で、30以上もの多種多様な自作アプリを所持していた。

『信号妨害アプリ(ジャミング君)』『サイコメトリーアプリ(思い出君)』『テレポートアプリ(シュレ猫君)』『展開図アプリ(メルカトル君)』『非破壊検査アプリ(透視君)』……等々。



身を固くしてギュッと目を閉じて、震えるシナモン。


コウジはいつもとは違う小さい声で


「ごめん、シナモン、すぐ終わるから」


シナモンの髪に触れる。

あ……これじゃないか? 髪留めから信号出ているよ。

シナモンは記憶をたどる。

そういえばユーカリからDMを受けた際、最後にユーカリが意識体で髪留めに触れていた。

これ、ユーカリの『白ヤギ黒ヤギ(DM)』っていうスキルだよ。

……よし、もう発信器は壊したから安心しろ。

……シナモン? どうした、大丈夫か?

シナモンはコウジに体を触れられ、緊張で涙ぐんでいた。
バカバカ、コウジのバカ。
……ごめんって。
もうキライ。
……それ、本心?
二枚舌(ダブスタ)が無いとわからないの? この鈍感男。

いや、わかる。好きと嫌いって裏表みたいだな。

……シナモン、手繋いでもいい?

いちいち聞かないでよ、ホントに鈍感男。

さっきのサンショウ、マジむかついた。

シナモン、サンショウやチャイみたいな見せかけフェミ男に騙されるなよ。俺、まだまだスキル不足だけど、おまえのこと守るから。

コウジ、それって……もしかして告白?
おまえだって鈍感女。
ちょっと!
ケンカしながらも、シナモンとコウジはお互いの手をギュッと握り合っていた。
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