第6話 第2期9話『上級州国民の孫』
文字数 1,443文字
カルダモンのサーチ能力で、シナモンを襲ったレイプ未遂犯を探し出した。
その名は ”立川セージ”
上級州国民、立川ワサビの孫だった。上級州国民の親族のため権力で守られ、何度レイプ事件を起しても不起訴となっていた。
特殊犯罪先端捜査スーパー特区プロジェクトの代表よ。大学名誉教授。
自分の身内に犯罪者がいるなんて、笑えないブラックジョークね。
あいつ、レイプ常習犯だ。あんなの野放しにしちゃいけないよ!
立川セージはエセ精神病を盾に罪に問われないらしい。彼の情報は特殊なセキュリティーで幾重にも保護されていて干渉できない。
私達の攻撃も効かないかもしれないわよ。
上級州国民ってそこまで特権階級なの? 犯罪もやりたい放題ってわけ?
……私は立川セージと差し違える覚悟よ。バカだけど……アイツのことを忘れたことはなかった。毎晩思い出した。忘れたくても忘れられないの。
私はある意味アイツに一度殺されているようなものだから。
シナモン、おまえマジかよ。上級州国民に危害を加えたら、自分も産廃、調整区域送りだぜ。
覚悟はできている。もうみんな、私に関わらないほうがいい。
暫しの沈黙のあと、ずっと黙っていたナツメグが、決意したように口を開いた。
私は、立川セージみたいな人間、そしてそれを庇う人間と体制が許せない。ヤツはこれからも人を傷つけるだろう。シナモンの復讐に関係なく、私は立川セージを去勢する。
でないと、臨終のいまわの際で絶対に後悔するもの。
シナモン、おまえ、俺にだってビビるクセにおまえ一人じゃ危ないよ。自分を襲ったヤツ相手に冷静になれないだろ。無理して笑顔作るな、ちょっとは俺を頼れよ。
おまえらマジかよ。せっかく今までコツコツ貯めた国債奨学金ポイントも全部没収だぜ。今までの実績とこれからの人生棒に振るなんて、俺にはできない。
俺は特待生になってから、体制に疑問を持っていた。破損したら中身を入れ替えるって、人権侵害だよね。君たちならともかく、失礼、クローブやローズマリーも疑問を感じないなんて、どこかで洗脳されているな、と。
俺は面白いかどうかで判断するから、お供しますよ。今の生活に未練ないし、君たち見ていると飽きないし。自分で言うのもなんだけど、俺はけっこう使える男だよ。
出た、早口! ミリンちゃん、ただのオタクじゃないね! 中身男前じゃん。グッときたぜ。
ごめん、私はまだマンガを描いていたいんだ。通信制の高校に移って身を隠す。でもこのことは絶対マンガにしてアップするから。
あ……そうなんだ。マンガはどこでも描けるから一緒に来ればいいのに
(小声)
……私も行けない。実家のグループ会社を継がなくてはいけない。自分一人の身じゃないから。でも権力と資力を得た暁には、私なりの戦い方をするから。
私は、少し、考えさせて……さっきミリン君の話聞いてから頭が痛いの。ガンガンする。
俺は辞退する。上級州国民に逆らうなんて正気の沙汰じゃない。おまえらヤンキーは失うものがなくて気楽でいいよな!
バカにすんなよ、そこまで人間として堕ちていねえよ!
えっと、ゴマ? ずっと黙っているけど、あなたはどうするの?
俺も頭痛い、なにも考えられない。だってどっち選んでも地獄っぽいじゃん……どっちか決めてよ。
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