第10話 第2期最終回②『ここは隠れ家非公然アジト』
文字数 1,839文字
調整区域は全域産廃処理場で人が住めない場所と聞かされていたが、9番ゲートを渡ると、過疎地域の限界集落といった自然豊かな風景が広がっていた。
田畑が広がり、きれいな小川も流れている。自給自足をしているらしい世捨て人のような人々も数名確認した。
お、なんだなんだ君たち。ここに侵入できるなんて一般人じゃないな。
ああ、皆さん、警戒しないで。
俺たちは州国公務員でここの管理業務をしています。体制側に嫌われて、お仕置き人事で飛ばされてきた者ばかりなんです。
通報したりはしませんよ。
公務員が数名在籍していた。AI化が進み時間に余裕ができ、スローライフを満喫している様子だった。
シナモンたちは警戒心を解き、自己紹介と今までの経緯を話した。
俺は ダージリン。管理職で、村長って呼ばれているけどまだ32歳だからな!
ここで静かにのんびり過ごしたいから、調整区域は人が住めないってバッドなイメージを流して、本土のヤツが近づかないよう工作したのは、俺だぜ。
俺はセイロン。ダージリンの部下です。
年齢? まだ24歳ですよ。ちょっと落ち着いて見えるタイプなんです。 え? 24はオジサン? ……
この先の公民館近くに、君たちと同世代の子が3人いますよ。
その子達も半月ほど前だったかな? ここに来たばかりです。
公民館の場所を教えてもらい、コウジがステルス・ドローンで探索
これ、バジル先輩の歌声よ!
マジマジマジカル・カンファーレーンス 保健室のソルジャー 君の脳にDM届け シナプス駆け巡れ~
ね?
公民館前でバジルを発見。ファンらしい男2人と一緒にいた。
バジル、無事だったんだ! 廃棄したってユーカリのクソ野郎が言っていたから……(号泣)
やだ、私も泣いちゃう。私達、廃棄される前にここに侵入したんだ。アールグレイの提案なの。
運営のやり方に疑問ありまくりだったから、同意書(シコウテイシ)を解いて運営を調べてみたらね、裏でとんでもないヤツらと繋がっていたのよ! 真っ黒な相関図だったわ……マジでファシズム化待ったなし。
センター長自身がサイコパスだったしね。
みんな、紹介するわ。
こちらアールグレイ君は統計学者、チャイ君はお医者さんよ。2人ともとっても頭が良くてフットワークが軽いの。私の自慢のハニー達よ。
アールグレイです。
学者じゃないよ、まだ数理工学の博士前期課程だよ。
チャイです。
俺は薬学部のただの学生。バジルちゃんはいつもお医者さんとか言うから……
だって将来そうなるんでしょ?
だったら先取りしてなったつもりで行動して、現実を寄せていくのよ!
私のアイデア、未来の学者さんと一緒だったのね。嬉しい。
脳機能研究センターでもらっていた薬を飲まなくなってから、少し考えがまとまるようになってきたの。
感動のご対面で盛り上がっているところ悪いけど、こんな僻地でこれからどうするつもりだよ……
ウチらのスキルを合わせれば、なんとかなるっしょ! それに優しそうなおじさん達もいたし。
さすがヤンキーは強いですね。まったく根拠の無い自信でも、堂々と明るく話されると、こちらの気分も前向きになるみたいです。
お布団はここの公民館に新品が揃っているわよ。
9から21のゲートには災害時用備蓄品の倉庫があって、食べ物はたくさんあるから大丈夫。他のゲートにも自由に行けるわよ。村長さんに教えてもらったの。
私がインナーダイブして改訂上乗せ条例(ジチタイルール)発動するわ。
調整区域特例措置法設置、毎日高級食材を運ばせる。
わたしグルメだから、ジャンクフード食べられないの。冷めた食事も無理。出来たてでないと。
でもね、みんなみたいにダイレクトに展開できないの。
瞑想して深くインナーダイブしないと発動しない。消耗するし。
みんなみたいにすぐに発動できるようになりたいわ。
私達のスキルは単純だからね。特に男子チーム。
クローブがインナーダイブしている間の防御は任せて!
ウチらなんか起きていてもたまに夢うつつだもん、特に授業中。
ね、シナモン?
そうなの、教科書開くとインナーダイブしちゃう。すぐにウトウト……
【ナレーション】
上級州国民を目指していたはずの私達は、現在、非公然組織でここは隠れ家、非公然アジト。
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