第29話 ユーカリ&モカ上陸

文字数 1,397文字

リニアカーを降り立ち、日傘と大きなスーツケースを自動操縦しながら9番ゲートを渡ってきたユーカリ&モカ。


ちょうどその頃、みんなでお昼に流し素麺を食べていた。

げっ、ヤバい、ユーカリだ! 

なんでなんで? 俺逃げるから。

(静かに人差し指をチャイに向けて)ゴマ、スキル借りるわよ。

『座して待て(キャンドルサービス)』発動。

急激にGがかかったかのように動けなくなるチャイとみんな。


ゆっくりと近づくユーカリ。


目の前を流れてゆく素麺……

ひ、久し振り。元気……だった?

…………


なに? そのダサいTシャツ。

あ、コレ? ひどいな!

バジルグッズの限定品だよ。黒地にロゴがグリーンでカワイイじゃん。

あ! サンショウ君!

急にいなくなるんだもん、先生心配していたのよ。よかった、無事だったのね。

うるせえ、馴れ馴れしく声かけるなババア。俺に余計なことしやがって。

お、いいぞ、サンショウ!

やっぱりサンショウはこうでなくっちゃ!

うん。平常運転だ。
サンショウはカルダモンの地道なリハビリの甲斐あって、すっかり元通り『女性の敵代表』に返り咲いていた。

嘘でしょう! 私がサービス残業までして好みの王子様に仕上げたのに……

サンショウ君をこんな風にしたのは誰!? 誰なの? 私のサンショウ君を返して!!

あさっての方を向いてすっとぼけるカルダモン。


恐る恐るアールグレイが、ピリピリしているユーカリに声をかける。

ユーカリ課長代理、ここにいらっしゃったのはゲンマイ課長の指示ですか?
違うわ。あなたゲンマイ工作隊のアールグレイさんね。

ゲンマイ課長の懐刀といわれているユーカリ課長代理が、単独行動ですか。

もう仕事なんてどうでもいいの……

私今までゲンマイ課長に滅私奉公で尽くしてきたのに、マンデリンが育児休業から復帰した途端、課長はマンデリンばかり引き立てているのよ……時短で全部私に丸投げして帰って行く癖に。子どもが熱出して急に休むのは毎度のこと。仕方ないことだとはわかっているわよ。

でもね、今回の人事異動で私のプロジェクトをマンデリンに引き継がせて、私はモカと一緒に極北矯正収容所へ異動よ、どういうこと? だいたいあんた達が自分勝手に(愚痴の止まらないユーカリ。以下略)

ムカついたから、年休と積み立て休暇全部使って、何年振りかのバカンスよ。
(小声で)面倒くせえ女だな。
(小声で)『私が今、なんで怒っているのかわかる?』とか聞くタイプ。
チャイ、ユーカリ課長と知り合いなの?

ユーカリ課長 ”代理” ね。

……まあ、昔の知り合いかな。

つき合っていたの?

!? バジル!

廃棄したはずなのに、どうして? 再起動したの? っもう、何が何だか。

ユーカリ課長とお友達、お腹空いてイライラしているんじゃない? 

素麺食べますか? 美味しいつけダレ2種類ありますよ。

そして捕獲指令が出ているシナモン……あなた本当にどんなときも緊迫感無いわよね。

自分の置かれている状況、ひとつもわかっていないんだから。もう説教する気も失せたわ。

(それから……オタク丸出しのダサいアイドルTシャツ着ているチャイを見たら、一気に醒めたわ。つき合っていたことも抹消したいくらいに。本当はアールグレイよりずっと年食っているクセに、アレは無いわよね……)

ユーカリとモカは3分後には、みんなの輪の中に入って一緒に素麺を食べていた。


ますます賑やかになった9番ゲート。

ユーカリ&モカ、社畜のバカンスの始まり。

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