第49話 夏休み
文字数 3,852文字
ナナの学校が夏休みに入った。エリカに受けさせた期末試験の結果はさんざんで、補習が三教科も入ったが、ナナは進路希望を就職にしているため、他の生徒よりは気楽だ。長谷川いのりは、美大に向けて美術予備校に通っていて、さすがにナナとつるんでは行動出来ない。
今日は、フューリアと共に白樺堂に来ている。
先日の手紙の件は、フューリア経由で報告済だ。
「どうだい婆さん。何か分かったかい?」
「魔王。あんたナナの恰好してるんだから、もう少し丁寧に話しな!
手紙の件は、進捗なしだ。
あれだけじゃ、都内から投函された事位しか分からん」
「いや、手紙もそうだけどよ。悪霊化阻止の件とかもだよ!」
「ああ、そっちも芳しくない。イラとデルリアルでちょくちょく打ち合わせてはいる様だが、何せ非公式だからね。
バレたら、二人とも自陣営から裏切り者扱いされるから……」
「あーあ。そんじゃ仕方ねーな。それにしても暑いなここ。
冷房効いてねえんじゃねーの?」
「うるさい! 年寄りはそんなにキンキンに冷やさなくてもいいんじゃ!
じゃが……あの手紙なんじゃが、なんとも胡散臭いのう。
まるでこっちの状況を見透かしたかの様じゃ」
「そうですね。まさにナナちゃんの悪霊化を促進しようという悪意みたいなものを感じます」サリー婆の懸念にフューリアも賛同した。
「それって……もしかしたらエルフとか魔族が犯人かもって事かよ?」
「断言は出来んが油断せんほうがよい。もし犯人の意図がナナちゃんの悪霊化だとしたら、どんな卑怯な手段でナナちゃんを動揺させようとするか分かったもんじゃないぞ」
「だが……仮にナナが悪霊化したとしたら、あたいはどうなるんだ?」
「さて。試す訳にもいかんが……。
もしかしたら、この身体の中におられんくなるのではないか?」
「そうか。それならば、間接的なあたいへの攻撃にもなる訳か」
白樺堂内は、サリー婆がマナの流れを完全に支配出来ているので、ナナが出て来ても安全だ。たまには表でゆっくしたらという意図で、エリカと替わって、ナナとお茶休憩しようという事になった。
「あー。ナナちゃん。私、とっておきのケーキ買ってきて、冷蔵庫に入れてるんだよ。今持ってくるからね」
そう言ってフューリアが席を立った。
ああ、やっぱり表はいいな。深層は落ち着くけど寂しいし……。
でも……やっぱり、私がこんなに楽しんでちゃいけない……いやいや、それじゃまたエリカに怒られちゃう。
「おまたせー。はい、ナナちゃん」
そう言いながら、フューリアが可愛いチョコレートショートを持って来た。
(あー、ナナいいなー。後で一口でいいから替わってくれ!)
(はいはい。わかったよ)
その時、ナナのスマホが鳴動した。誰だろ? いのりかな?
そう思いながらスマホを手にしたナナの身体がいきなり硬直した。
「えっ? ナナちゃん、どうしたの?」
フューリアとサリー婆が怪訝そうにナナを見るが、ナナが鳴動し続けるスマホを握りしめたまま固まっていた。そして、ポトリとスマホを落とした。
「大丈夫かい? ナナちゃん」
そう言いながらサリー婆が鳴動を続けるスマホを拾ったとたん、サリー婆も一瞬フリーズした。そして一呼吸おいてから、その着信画面をフューリアに見せた。
フューリアが見ると、スマホの画面には、発信者
「うーっ……ぐがー……うわーーーーーー!!!!! %“#>+-{¥}」
ナナが突然奇声を発した。
「いかん!! エリカ、早くナナを深層に引っ込めて落ち着かせるんだ!!」
(えー、一体何が……って、おいばばあ。戻れねえぞ!!)
「サリーさん。エリカ、表に出られないんじゃ!?」
フューリアが叫ぶが、ナナは立ち上がって狂った様に動き出し、そして叫んだ。
「いやだ……私は死にたくない……ほのかの所には行けないよ……行きたくないよーー!」
その時、サリー婆が後ろからナナに飛びついたかと思うと、どこからか持ちだした布切れをナナの顔に当てた。するとだんだんナナの動きが鈍くなり、やがて座り込んで動かなくなった。
「サリーさん。ナナちゃん、大丈夫ですか?」
「ああ。ちょっと麻酔剤を使わせてもらったよ。
おい魔王。今なら出て来られるじゃろ?」
「ああ、すまねえ。助かったよ。それにしても、表で興奮すると今見たいになるのか。深層にいるより厄介だな。で、何が起きたんだ?」
「これじゃよ……」
サリー婆は、もう鳴動が止まっているナナのスマホをエリカに見せた。
「おいおい。こりゃ一体……って、何でほのかの名前がここに出てくんだよ!?」
「いや、わしにも分からん。じゃが、このスマホ預かってよいか?
これで発信した奴を調べられるかも知れん」
「ああ、頼むわ。でもこれで確定だ。こないだの手紙といい、犯人は絶対ナナを壊そうとしてやがる! 畜生、卑怯だぞ。あたいに恨みがあるなら直接来やがれ……だからナナは……ナナはそっとしておいてくれよー」
そしてエリカは深層に降りて、傷ついたナナの魂を優しくいたわってやるのだった。
◇◇◇
「ナナ! ナーナ!」
遠くで、誰かが自分を呼んでいる。エリカだろうか。いや、声が違う。
ずっと昔に聞いた懐かしい声のような気がする。
深層はいつも薄暗くて何もない。
ナナは、声のする方にゆっくり歩いていった。
はるか遠くにぽつんと灯りが見えたので、小走りに近寄った。
誰かいる……えっ、あれは。
ほのか!?
「ナナー。ひさしぶりー。ようやく会えたね」
「ほのか……あなた、死んじゃったんじゃ……」
「何言ってんのよナナ。あんただって死んでるでしょ?
死んだ者同士、仲良くしましょうよ。私、あなたを迎えに来たのよ」
「迎えって……成仏って事?」
「もう、分かってないなーナナは。私もあなたも自殺でしょ。それがこうしてまだ成仏してないんだから、お互いに地縛霊になるしかないじゃん!」
「えっ、でもそれは……エリカがダメだって……」
「なに言ってんの? 何であんただけ助かると思ってんの?
そんなの不公平じゃない。
元はと言えば私が死んだのもあんたのせいじゃない!
それをあんたは……ふざけるな!! 絶対許さないから!!」
「あっ、ほのか。違うの……ごめんなさい……私……」
◇◇◇
「うわーーーー!」
気が付くと、ナナは深層でエリカに抱っこされて寝ていた。
今のは夢……でも……私……。
ナナの動揺が悪いマナを作り始めたので、それにエリカが気づいて声をかけた。
「どうしたナナ。怖い夢でも見たか……。
はは、そういや修学旅行の時、私も見たっけ」
「エリカ……私……もう生き続けなくていいいよ。やっぱりもうあきらめる。
イラさんとデルリアルさんに、私の魂だけ引っこ抜く方法を考えてもらおうよ」
「おいおい、突然何を言い出すんだ。
せっかくこうして暮らしているんだ。もう少し前向きに……」
「違うの! 私、怖い! このまま悪霊や地縛霊になっちゃったらどうしよう。
そんな事になる位なら、私、そうなる前に成仏したい!」
「ナナ……」
様子を見る限り、悪しきマナの生成はわずかで、ナナは落ち着いている様だ。
本心でそんな事を言い出しているのか?
だが、あまりここでナナを刺激する事もあるまい。
「そっか。それも選択肢なのかな……。
こんどばばあも交えて、一度相談してみようか?」
エリカのその言葉にナナはちょっと安心した様子で、しばらくしてまた眠りについた。
◇◇◇
数日後、白樺堂を訪れたナナは、サリー婆に、もう成仏したいと希望を伝えた。
「そうかい……まあ、こんな追い込まれ方をしたら、そんな気になっちまうのも無理ないか。じゃがなナナちゃん。あんたのスマホを借りてわしもいろいろ調べたんじゃ。まあ、調べたのは探偵さんなんだが……それで判かった事がある」
「判かった事?」
「そうじゃ。それでな、その探偵さんが言うにはこの間の電話は、少なくとも幽霊からではなく、実在の人物から発信されたものなんだそうじゃ」
「実在の人物……でも、それじゃ誰が?」
「誰かはまだわからん。多分、エリカに対抗する勢力だと思うんじゃ。
それで、発信された大体の場所もわかったんじゃが……」
「どこからですか?」ナナの語調が荒くなる。
「ああナナちゃん、興奮するな。この件には近寄らん方がいい。
今のあんたじゃ深層でマナも作れんし、危険なだけじゃ」
「でも、サリーさん。私、ほのかの名前を使った人が許せない。
でも……もし、本当にほのかに関わる人だったりしたら、私はお詫びがしたい。
ですからお願いです。どこから発信されたのですか?」
そこで、エリカが表に出て来た。
「ばあさん、私からも頼む。あんな不意打ち、何度も食らう訳にはいかねえし、早いとこナナを安心させてやりてえ。ナナのマナはあてにできないんで、出来ればフューリアは借りたいが……ダメか?」
「えーっ。私が行ってもマナが無いんじゃ足手まといだよー」
フューリアが慌てた。
「ふー、仕方ない。私が同行するよ。
じゃが、こんな年寄り、余りあてにするでないぞ」
「はっ、そんなにでっけえオド持ってるくせに、出し惜しみしなさんな!」
「えっ? そうなの?」
「なんだ、フューリア。お前気付いてないのかよ。
まあ、素の人間じゃ仕方ねえか。
まあ、強欲ばばあだから、マナは分けてくれんと思うぜ」
「こら魔王。言うに事欠いて強欲ばばあとは……手伝ってやらんぞ!」
「はは、わりいわりい。で、どこなんだい? それ」
今日は、フューリアと共に白樺堂に来ている。
先日の手紙の件は、フューリア経由で報告済だ。
「どうだい婆さん。何か分かったかい?」
「魔王。あんたナナの恰好してるんだから、もう少し丁寧に話しな!
手紙の件は、進捗なしだ。
あれだけじゃ、都内から投函された事位しか分からん」
「いや、手紙もそうだけどよ。悪霊化阻止の件とかもだよ!」
「ああ、そっちも芳しくない。イラとデルリアルでちょくちょく打ち合わせてはいる様だが、何せ非公式だからね。
バレたら、二人とも自陣営から裏切り者扱いされるから……」
「あーあ。そんじゃ仕方ねーな。それにしても暑いなここ。
冷房効いてねえんじゃねーの?」
「うるさい! 年寄りはそんなにキンキンに冷やさなくてもいいんじゃ!
じゃが……あの手紙なんじゃが、なんとも胡散臭いのう。
まるでこっちの状況を見透かしたかの様じゃ」
「そうですね。まさにナナちゃんの悪霊化を促進しようという悪意みたいなものを感じます」サリー婆の懸念にフューリアも賛同した。
「それって……もしかしたらエルフとか魔族が犯人かもって事かよ?」
「断言は出来んが油断せんほうがよい。もし犯人の意図がナナちゃんの悪霊化だとしたら、どんな卑怯な手段でナナちゃんを動揺させようとするか分かったもんじゃないぞ」
「だが……仮にナナが悪霊化したとしたら、あたいはどうなるんだ?」
「さて。試す訳にもいかんが……。
もしかしたら、この身体の中におられんくなるのではないか?」
「そうか。それならば、間接的なあたいへの攻撃にもなる訳か」
白樺堂内は、サリー婆がマナの流れを完全に支配出来ているので、ナナが出て来ても安全だ。たまには表でゆっくしたらという意図で、エリカと替わって、ナナとお茶休憩しようという事になった。
「あー。ナナちゃん。私、とっておきのケーキ買ってきて、冷蔵庫に入れてるんだよ。今持ってくるからね」
そう言ってフューリアが席を立った。
ああ、やっぱり表はいいな。深層は落ち着くけど寂しいし……。
でも……やっぱり、私がこんなに楽しんでちゃいけない……いやいや、それじゃまたエリカに怒られちゃう。
「おまたせー。はい、ナナちゃん」
そう言いながら、フューリアが可愛いチョコレートショートを持って来た。
(あー、ナナいいなー。後で一口でいいから替わってくれ!)
(はいはい。わかったよ)
その時、ナナのスマホが鳴動した。誰だろ? いのりかな?
そう思いながらスマホを手にしたナナの身体がいきなり硬直した。
「えっ? ナナちゃん、どうしたの?」
フューリアとサリー婆が怪訝そうにナナを見るが、ナナが鳴動し続けるスマホを握りしめたまま固まっていた。そして、ポトリとスマホを落とした。
「大丈夫かい? ナナちゃん」
そう言いながらサリー婆が鳴動を続けるスマホを拾ったとたん、サリー婆も一瞬フリーズした。そして一呼吸おいてから、その着信画面をフューリアに見せた。
フューリアが見ると、スマホの画面には、発信者
村山ほのか
とハッキリ表示されていた。「うーっ……ぐがー……うわーーーーーー!!!!! %“#>+-{¥}」
ナナが突然奇声を発した。
「いかん!! エリカ、早くナナを深層に引っ込めて落ち着かせるんだ!!」
(えー、一体何が……って、おいばばあ。戻れねえぞ!!)
「サリーさん。エリカ、表に出られないんじゃ!?」
フューリアが叫ぶが、ナナは立ち上がって狂った様に動き出し、そして叫んだ。
「いやだ……私は死にたくない……ほのかの所には行けないよ……行きたくないよーー!」
その時、サリー婆が後ろからナナに飛びついたかと思うと、どこからか持ちだした布切れをナナの顔に当てた。するとだんだんナナの動きが鈍くなり、やがて座り込んで動かなくなった。
「サリーさん。ナナちゃん、大丈夫ですか?」
「ああ。ちょっと麻酔剤を使わせてもらったよ。
おい魔王。今なら出て来られるじゃろ?」
「ああ、すまねえ。助かったよ。それにしても、表で興奮すると今見たいになるのか。深層にいるより厄介だな。で、何が起きたんだ?」
「これじゃよ……」
サリー婆は、もう鳴動が止まっているナナのスマホをエリカに見せた。
「おいおい。こりゃ一体……って、何でほのかの名前がここに出てくんだよ!?」
「いや、わしにも分からん。じゃが、このスマホ預かってよいか?
これで発信した奴を調べられるかも知れん」
「ああ、頼むわ。でもこれで確定だ。こないだの手紙といい、犯人は絶対ナナを壊そうとしてやがる! 畜生、卑怯だぞ。あたいに恨みがあるなら直接来やがれ……だからナナは……ナナはそっとしておいてくれよー」
そしてエリカは深層に降りて、傷ついたナナの魂を優しくいたわってやるのだった。
◇◇◇
「ナナ! ナーナ!」
遠くで、誰かが自分を呼んでいる。エリカだろうか。いや、声が違う。
ずっと昔に聞いた懐かしい声のような気がする。
深層はいつも薄暗くて何もない。
ナナは、声のする方にゆっくり歩いていった。
はるか遠くにぽつんと灯りが見えたので、小走りに近寄った。
誰かいる……えっ、あれは。
ほのか!?
「ナナー。ひさしぶりー。ようやく会えたね」
「ほのか……あなた、死んじゃったんじゃ……」
「何言ってんのよナナ。あんただって死んでるでしょ?
死んだ者同士、仲良くしましょうよ。私、あなたを迎えに来たのよ」
「迎えって……成仏って事?」
「もう、分かってないなーナナは。私もあなたも自殺でしょ。それがこうしてまだ成仏してないんだから、お互いに地縛霊になるしかないじゃん!」
「えっ、でもそれは……エリカがダメだって……」
「なに言ってんの? 何であんただけ助かると思ってんの?
そんなの不公平じゃない。
元はと言えば私が死んだのもあんたのせいじゃない!
それをあんたは……ふざけるな!! 絶対許さないから!!」
「あっ、ほのか。違うの……ごめんなさい……私……」
◇◇◇
「うわーーーー!」
気が付くと、ナナは深層でエリカに抱っこされて寝ていた。
今のは夢……でも……私……。
ナナの動揺が悪いマナを作り始めたので、それにエリカが気づいて声をかけた。
「どうしたナナ。怖い夢でも見たか……。
はは、そういや修学旅行の時、私も見たっけ」
「エリカ……私……もう生き続けなくていいいよ。やっぱりもうあきらめる。
イラさんとデルリアルさんに、私の魂だけ引っこ抜く方法を考えてもらおうよ」
「おいおい、突然何を言い出すんだ。
せっかくこうして暮らしているんだ。もう少し前向きに……」
「違うの! 私、怖い! このまま悪霊や地縛霊になっちゃったらどうしよう。
そんな事になる位なら、私、そうなる前に成仏したい!」
「ナナ……」
様子を見る限り、悪しきマナの生成はわずかで、ナナは落ち着いている様だ。
本心でそんな事を言い出しているのか?
だが、あまりここでナナを刺激する事もあるまい。
「そっか。それも選択肢なのかな……。
こんどばばあも交えて、一度相談してみようか?」
エリカのその言葉にナナはちょっと安心した様子で、しばらくしてまた眠りについた。
◇◇◇
数日後、白樺堂を訪れたナナは、サリー婆に、もう成仏したいと希望を伝えた。
「そうかい……まあ、こんな追い込まれ方をしたら、そんな気になっちまうのも無理ないか。じゃがなナナちゃん。あんたのスマホを借りてわしもいろいろ調べたんじゃ。まあ、調べたのは探偵さんなんだが……それで判かった事がある」
「判かった事?」
「そうじゃ。それでな、その探偵さんが言うにはこの間の電話は、少なくとも幽霊からではなく、実在の人物から発信されたものなんだそうじゃ」
「実在の人物……でも、それじゃ誰が?」
「誰かはまだわからん。多分、エリカに対抗する勢力だと思うんじゃ。
それで、発信された大体の場所もわかったんじゃが……」
「どこからですか?」ナナの語調が荒くなる。
「ああナナちゃん、興奮するな。この件には近寄らん方がいい。
今のあんたじゃ深層でマナも作れんし、危険なだけじゃ」
「でも、サリーさん。私、ほのかの名前を使った人が許せない。
でも……もし、本当にほのかに関わる人だったりしたら、私はお詫びがしたい。
ですからお願いです。どこから発信されたのですか?」
そこで、エリカが表に出て来た。
「ばあさん、私からも頼む。あんな不意打ち、何度も食らう訳にはいかねえし、早いとこナナを安心させてやりてえ。ナナのマナはあてにできないんで、出来ればフューリアは借りたいが……ダメか?」
「えーっ。私が行ってもマナが無いんじゃ足手まといだよー」
フューリアが慌てた。
「ふー、仕方ない。私が同行するよ。
じゃが、こんな年寄り、余りあてにするでないぞ」
「はっ、そんなにでっけえオド持ってるくせに、出し惜しみしなさんな!」
「えっ? そうなの?」
「なんだ、フューリア。お前気付いてないのかよ。
まあ、素の人間じゃ仕方ねえか。
まあ、強欲ばばあだから、マナは分けてくれんと思うぜ」
「こら魔王。言うに事欠いて強欲ばばあとは……手伝ってやらんぞ!」
「はは、わりいわりい。で、どこなんだい? それ」