エピソード8:ミス・ハンター
文字数 1,816文字
と最後に言われてリラはすこし考え聞いた。
リラは納得したふうに見せたが、心のなかではなにかあるなと決めていた。しかし先ほどの試合でピンポンブラザーズの奇策を打ち破ったように、今回もエリと協力すれば勝てると信じていたため詮索はしなかった。そうしてふたりは時間をかけて色んな銃をためし自分に合うものを探した。その結果、リラはハンドガンをエリはスナイパーライフルを手に取った。
オバケがそう宣言しドラムロールが鳴り響いたあと、一人のオバケが暗闇から、まるで石像が運び出されてきたかのように体も腕も手も静止させたまま、静かに現れた。彼あるいは彼女は白い丸頭につぎはぎだらけで潰れたベレー帽を乗せ、体を迷彩柄で包み、左目を黒い眼帯で隠し、これといくつもの死線をくぐり抜けてきたのか年季の入ったアサルトライフルを担いでいた。観客席はその入場を大歓声ではなく静かな敬意のこもった拍手でもって応えた。軍人風のオバケはやがてリラとエリの前で機械的に止まり一礼し、それにふたりが驚きつつも頭をさげると、拍手が止みオバケが紹介を始めた。
彼女はミス・ハンター。本名は誰にも知られていません、しかしその実力は誰もが知っています。ミス・ハンターはその名の通り狩人としてありとあらゆる生物を――小さいものはネズミから大きいものは大海の主クジラまで、その相棒たったひとつでしとめてきました
とリラが大層なお話に小馬鹿にしたような態度を取る一方で、エリはそっと一歩距離を取った。しかし、そんな態度を見せたリラもあらためて彼女を観察してみた時、今の逸話がけっして冗談ではないことを悟った。彼女の白い体にあるふたつの空洞――他のオバケたちと変わらないはずの目とふいにぶつかったとき、その暗い奥深くから目の前にいる彼女とは違う別のなにかが自分のことを観察している、とそんなふうに感じたのだ。
リラはそう考えて、そして納得した。見るに自分たちだけに用意されている大砲に事前の念入りな練習時間、なんだかやけに親切な気がしたのは間違いじゃなかった。だからこそ、リラのハートに火がついた。負ける可能性の高い勝負だからこそ燃え立つのだ。それも今はエリがいる。絶対に勝つ。
密かにやる気を漲らせるリラの横でオバケは説明を続ける。
リラとエリは同時にうなずいた。
ふたりはそれぞれの武器を持ってカウンターの右半分に二メートルほどの間隔をあけて並び、そして構えた。ミス・ハンターはその場で九十度左回転をしカウンターの前まで移動すると、二人とは対照的に、直立の姿勢のまま開始の合図を待った。それからオバケが三人に見えるように場所を変え、
タイマーがセットされたスクリーンとその両隣に数字の0が表示された半分ぐらいの大きさのスクリーンが現れた。リラとエリは銃をギュッと握りなおす。そして
どこからか取り出した笛をオバケは思いっきり吹いた。