エピソード1:目がさめると……?
文字数 735文字
なにかの気配を感じてリラは目を覚ました。そして寝ぼけるということを知らない彼女はすぐに起き上がってあたりを見渡し、ここが自分の知らない場所だと気がついた。しかし、怖がりはしなかった。
いつも寝るときにくるまって――とくに今日は、もしかしたら昨日? とにかく最近ではとくに寒かったから頭まで――いるお気に入りの毛布もこの間の誕生日に新しく買ってもらったふかふかのベッドもなく、あるのは冷たくて固い茶色い木の床と下は無地で上には黒、赤、青、緑の丸が描かれた薄黄色のスウェットのパジャマだけ。それに部屋中に飾ってある大好きなゲームキャラのポスターもぬいぐるみも、一面が黄ばんでいてところどころ崩れているボロい壁と蜘蛛の巣に変わってしまっている。そしていつもはそっけないのに寒くなると毛布に潜り込んでくる猫のマーシャもいない。ひとりぼっちだった。でも、怖くはなかった。
怖くはないけれど突然の事態にはかわりなく、困惑するリラはそう呟く。
その背後にひとつの黒い影が忍び寄る。
そして消えいりそうな小さな声をリラにかけた。
突然背後から声をかけられ心底びっくりしたリラはおもわず叫び声をあげそのまま振り返ると、そこには目を疑うような光景があった。
女の子が宙に浮いていた。長くてボサボサの黒髪で顔を隠し、真っ白な布に穴を開けてそこに頭を通しただけのような服装をした自分と同い年ぐらいの女の子が、地面から三十センチぐらいまるで天井から見えない糸で吊られているかのように浮かんでいた。
リラは予想もしていなかった光景に、声をかけられた以上に驚いて、口をあんぐりと開けてその女の子のことを見上げたままかたまった。