エピソード4:いつかくる
文字数 1,227文字
ちょっととは言ったもののほとんど体力を使ってしまったので、回復するのにけっこう長めな休憩になった。
体を起こしてリラは言った。
そして立ち上がりお尻をパンパンとはたいていると、エリが後ろへとまわって背中を払い始めた。リラがお礼を言い、あらかた綺麗になったところで、ふたりは中断したときのまま放置されている本のもとへと行きふたたびそれを調べ始めた。時々はなんてことのない話をしながら根気よく項をめくっていく。しかし、再開した作業はそう長くは続かなかった。二つ目の本棚も終わりが見え始めたころ、リラが突然持っていた本を勢いよく閉じた。バタンという渇いた音が部屋に響き、エリが何事かと振り向いたら、
リラは叫んだ。
その我慢の切れた魂の叫びを聞いたエリは苦笑いをし、持っていた本を静かに閉じもとの場所に戻してから、彼女のところへ向かった。そしてエリが自分のそばに来たところでリラは続けた。
エリはそう言って視線を本棚へと向けた。まだ三つ残っている。
肩をガックリと落としそう言ったあと、リラは片手に本を持ちながら腕を組み考え出した。
かりに本の中に謎がないなら、収納も机の下も椅子の下も見終わっているいま、エリの言ったように探す場所はもうない。そうなるとここでおしまい。残りをここで過ごさなければならなくなる。しかし、そんなことあるだろうか? 理由もなくクリアできなくするようなことがあるだろうか? 部屋は静謐な空気に包まれている。自分の調べた本がいくつか床に散らかったままになっている。ここで一生を過ごす。なにも遊ぶものもない、あの世なのかこの世なのかもわからない世界で。でもそのおかげなのか、エリはいる。
あまり考えないようにしていたけれど、このゲームをクリアしたら間違いなくエリとはもう会えなくなってしまう。ここで会ってからまだ数時間程度、でもこのマネキンのようにボーっと突っ立って考えているんだかいないだかわからない、不思議な落ち着きぐあいというか物静かさが好きだし、かと思えばさっきのようなイタズラなところも好きだから、ここでお別れなんかしたくない。それも本心だった。ただここにずっといたくないのも確かだった。
リラは考えるのをやめた。どちらの気持ちも半々であり、今は決めることができない。とりあえず目の前のことに集中しよう、そうリラは心のなかで呟き、これまで遊んできたゲームの数々を思い出し、こういう詰んだと思うような時はどうすればいいのか、幸いなことに時間はいくらでもあるようなので改めて考えた。しばらくして彼女はひとつの可能性を見つけた。