エピソード16:タネあかし
文字数 1,108文字
そしてそう言って歩き出したので不思議に思いながらエリもあとについていった。暗い廊下を静かに抜けて、やがてあの展示室のような保管庫の前でリラが足をとめ、中へ入っていった。それを見てエリは「そういえば……」と思い出した。リラは空き部屋に来る途中もここに寄っていた。もし階段から来たならここでなくてもいいはずだし、わざわざ中に入らなくてもいい。オバケに見つからないようにした可能性もあるけど、いま入っていったということはここに瞬間移動の秘密があるんだ。エリはすこしワクワクしながら部屋のなかに入った。そしてすぐにその秘密がわかった。
エリはそれを見て言った。
右側の壁の真ん中あたりに天井から梯子が降りていた。
扉の近くでエリを待っていたリラは、彼女が入ってきて梯子を目にしたのを見てそう言った。それから梯子の下まで歩いてから続けた。
パジャマのポケットから取り出して、エリに見せた。その手のなかには三日月のピアスが片方だけあった。
そう言ってリラはピアスをエリに渡した。
手首を彩る花を見せながらリラは答えた。
そう答えてエリはピアスを左耳につけはじめ、ちょっと手間取ったもののやがて無事につけ終わり、彼女の黒い髪の陰に浮かんだ小さな欠月は部屋の明かりを受けて煌めいた。そこに本来なら恐ろしい意味を持つ肌の白さがまじわり、言葉にできない不思議な魅力を添えた。
自分の感じたものを、自分の表現の少なさゆえに、伝えきれないのはものすごくもどかしかったけれど、エリが喜んでいるのであまり気にしないことにした。